憲法の力を信じて。

須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談

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資料の概要

資料名:
陳情書に対する弁護士相談結果について(報告)及び法律相談資料
文書管理番号:
590671
作成日:
2025年(令和7年)4月19日・同月23日
作成主体:
須賀川市議会事務局
取得経路:
情報開示請求
資料の種類:
発議書、法律相談資料及び相談結果の記録
掲載形式:
個人情報等を必要な範囲で非公開処理したPDF
原文PDF:

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この資料で確認できる事実

本資料は、2025年(令和7年)4月19日に実施された弁護士相談について、須賀川市議会事務局が同月23日付で内部報告として処理した発議書と、相談時に使用された資料及び相談結果の記録から構成されている。

発議書には、弁護士相談が同月19日午後6時から午後6時30分まで実施されたことが記録されている。
また、同席者として、須賀川市議会事務局の職員に加え、市民協働推進課長及び同課職員が記載されている。
この弁護士相談には、須賀川市社会福祉協議会の無料法律相談枠が利用された。

相談資料には、2011年当時の辞職勧告決議に関する経緯と、2025年に提出された陳情書の要旨が整理されている。

陳情書では、辞職勧告決議が、日本国憲法第31条、第13条、第14条、刑事訴訟法第336条等に反し、人権侵害に当たるとの主張が示されている。

また、陳情事項として、次の3点が記載されている。

決議内容及び経過の憲法的検証並びに刑事事件に与えた影響について、第三者機関による調査研究を実施し、その結果を公表すること。
検証結果に基づき、決議の撤回、関係者による謝罪その他の是正措置を講ずること。
辞職勧告決議に関するガイドラインを明文化し、制度化すること。

相談事項としては、陳情の取扱い、国家賠償法との関係、陳情書に記載された各主張の法的評価等が記載されている。

重要な記載

1 逮捕を理由として「有罪に近い推定」が許されるとする記載

本資料は、情報開示請求によって取得した須賀川市議会事務局の内部文書である。

その相談結果欄には、次の記載がある。以下は原文のままである。

加えて、逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない。

この記載は、本資料の中心部分である。

逮捕は、有罪判決ではない。
逮捕された者についても、有罪判決が確定するまでは無罪と推定される。

それにもかかわらず、本資料には、逮捕されていることを理由として、「有罪に近い推定」がなされても問題ないとの考え方が明記されている。

2 適正手続の保障に関する記載

陳情書に記載された適正手続の保障に対する違反については、次の趣旨の回答が記載されている。

例えば除名など法的拘束力がある行為であれば、弁明は必要であり違法となるが、今回は勧告であり、法的拘束力がないため問題ない。

3 陳情の取扱いに関する記載

陳情の取扱いについては、次の趣旨の回答が記載されている。

憲法は私人が使えるものではなく、一般陳情としての取扱いでよい。また、陳情はお願いとなるため議会の判断でよい。

また、須賀川市議会会議規則第136条に基づき、議長が陳情書又はこれに類するものを受理した場合、その写しを議員に配布するという対応で問題ないかとの相談に対し、次の趣旨の回答が記載されている。

議会内の規則に則り対応されたい。

さらに、陳情書において文書による回答を求めていることについては、次の趣旨の記載がある。

義務はない。

4 国家賠償法に関する記載

国家賠償法との関係については、議会が行った行為であることから、市を相手とする国家賠償請求になるとの趣旨の記載がある。

また、公的目的で行った行為であるため違法性はないと判断するとの趣旨の記載がある。

さらに、仮に違法性があったとしても、加害者を知った時から3年で時効となるため、時効と考えられるとの趣旨の記載がある。

5 議会事務局の関与に関する記載

議会事務局の関与と憲法尊重擁護義務の不履行については、次の趣旨の回答が記載されている。

仮に事務局の関与があったとしても、議員からの指示であれば、対応することは当然の行為と考えられる。違憲とは言えず、憲法尊重擁護義務違反とはならない。

6 陳情書の非掲載に関する記載

陳情書を須賀川市議会のホームページに掲載するか否かについては、次の趣旨の回答が記載されている。

陳情書のHPへの掲載は、任意であるので掲載しなくてもよい。

7 複数回にわたる辞職勧告決議に関する記載

複数回にわたり辞職勧告決議が行われたことについては、同じ事実を何度も裁判にかけることを禁ずる一事不再理との関係が質問され、次の趣旨の回答が記載されている。

4回目は、反省していないことに対してと捉えることができる。

この資料から生じる疑問

1 逮捕を理由として「有罪に近い推定」を行うことが許されるのか

刑事裁判において有罪判決が確定する前の者は、無罪と推定される。
逮捕は、捜査機関による身体拘束であり、有罪判決ではない。

それにもかかわらず、本資料には、逮捕されていることを理由として、「有罪に近い推定」がなされても問題ないとの記載がある。

この考え方は、無罪推定の原則と整合するのか。

2 法的拘束力のない辞職勧告であれば、適正手続上の問題は生じないのか

相談結果には、辞職勧告決議には法的拘束力がないため、弁明の機会を設けなくても問題ないとの趣旨の記載がある。

しかし、議会による公的な辞職勧告決議は、対象者の社会的評価、政治活動及び刑事手続に重大な影響を与え得る。

形式的な法的拘束力がないことのみを理由として、適正手続上の問題が生じないといえるのか。

3 判決前に繰り返された辞職勧告決議の影響を検討しなくてよいのか

本件では、刑事裁判の判決前を含め、辞職勧告決議が複数回にわたり行われた。

特に、第1回決議は勾留中に、第2回決議は初公判前に行われている。

これらの決議が、本人の社会的評価、政治活動及び刑事手続に与えた影響を検証しなくてよいのか。

4 公的目的で行われた行為であれば、違法性は否定されるのか

相談結果には、議会が公的目的で行った行為であることから、違法性はないと判断するとの趣旨の記載がある。

しかし、公的機関の行為であっても、その目的、手段、内容及び手続が適法であるかは、個別に検討される必要がある。

しかし、公的機関の行為であっても、その目的、手段、内容、手続及び影響が適法であるかは、個別に検討されなければならない。

公的目的を掲げたことのみを理由として、その行為の手続、内容及び影響について個別の法的評価を省略し、違法性を否定することができるのか。

5 議員からの指示があれば、議会事務局の関与は常に正当化されるのか

相談結果には、議員からの指示であれば、議会事務局が対応することは当然の行為であり、憲法尊重擁護義務違反とはならないとの趣旨の記載がある。

しかし、公務員には、法令を遵守し、憲法を尊重し擁護する義務がある。

議員からの指示があったという理由だけで、事務局の関与について独立した法的検討を要しないといえるのか。

6 須賀川市社会福祉協議会の無料法律相談枠を利用したことは適切であったのか

本件の弁護士相談には、須賀川市社会福祉協議会の無料法律相談枠が利用された。

しかし、本件相談は、市民個人の生活上の法律問題に関する相談ではない。
須賀川市議会及び須賀川市の関係部署が、過去の公的対応に関する陳情書への対応を検討するために実施した相談である。
このような相談のために、社会福祉協議会の無料法律相談枠を使用することは、その制度の趣旨及び目的に適合するのか。

また、本来、市民のために設けられた無料相談枠が、公的機関の内部対応のために使用されたのであれば、目的外利用に当たらないのか。

7 2025年時点で、過去の対応を検証し、是正する必要はないのか

相談資料には、辞職勧告決議の撤回、謝罪その他の是正措置が求められている。

これに対し、相談結果には、陳情に回答する義務がないとの趣旨の記載がある。

過去の公的行為について、具体的な人権侵害が指摘された場合にも、その内容を検証し、必要に応じて是正する義務は生じないのか。

8 本件陳情書を公開しない取扱いは、他の陳情書の取扱いと整合しているのか

相談結果には、陳情書のホームページへの掲載は任意であり、掲載しなくてもよいとの趣旨の記載がある。

しかし、須賀川市議会のホームページでは、他の陳情書が公開されている。

本件陳情書のみを公開しない取扱いは、他の陳情書と同一の基準に基づくものか。

関連法規

国内法

日本国憲法第13条: 個人の尊重及び人格的利益との関係が問題となる。
日本国憲法第14条第1項: 本件陳情書と他の陳情書との取扱いの差異に、合理的な理由があるかが問題となる。
日本国憲法第31条: 本人に弁明の機会を十分に与えないまま、公的機関が不利益な評価を行ったことと、適正手続との関係が問題となる。
日本国憲法第76条第3項: 刑事裁判の判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示したことと、裁判官の独立及び刑事手続への影響との関係が問題となる。
日本国憲法第98条第2項: 日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守する義務との関係が問題となる。
日本国憲法第99条: 市長、市議会議員その他の公務員が負う憲法尊重擁護義務との関係が問題となる。
地方公務員法第30条: 地方公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき義務との関係が問題となる。
地方公務員法第32条: 地方公務員の法令遵守義務との関係が問題となる。

国際人権条約(ICCPR)

市民的及び政治的権利に関する国際規約第14条第2項: 刑事裁判の判決前に、公的機関が有罪を前提とする評価を示したことと、無罪推定の原則との関係が問題となる。
市民的及び政治的権利に関する国際規約第2条第3項: 人権侵害の是正を求める申入れを受けた後の対応と、実効的救済を確保する義務との関係が問題となる。

条約の履行及び解釈に関する基準

条約法に関するウィーン条約(VCLT)第26条: 効力を有する条約を誠実に履行する義務との関係が問題となる。
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条: 国内法上の権限、手続又は制度を理由として、条約上の義務を履行しないことが許されるのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見第32号30項: 公的機関が、刑事裁判の結果を先取りする形で被告人の有罪を表明してはならないとする国際基準との関係が問題となる。
自由権規約委員会一般的意見第31号: 規約上の権利侵害に対する実効的救済、継続する侵害の停止及び適切な是正措置との関係が問題となる。

国際違法行為に対する国家責任

国家責任条文第1条: 国家の国際違法行為が、当該国家の国際責任を生じさせることとの関係が問題となる。
国家責任条文第2条: 国家に帰属する行為又は不作為が、国際義務の違反を構成する場合に、国際違法行為が成立することとの関係が問題となる。
国家責任条文第4条: 地方公共団体の機関による行為又は不作為も、国際法上、国家に帰属し得ることとの関係が問題となる。
国家責任条文第12条: 国家の行為又は不作為が、国際義務に適合しない場合に、義務違反が成立することとの関係が問題となる。
国家責任条文第14条: 継続する行為又は不作為による義務違反が、是正されるまで継続し得ることとの関係が問題となる。
国家責任条文第30条: 継続する国際違法行為の停止及び適切な再発防止措置との関係が問題となる。
国家責任条文第31条: 国際違法行為によって生じた損害に対する完全な賠償との関係が問題となる。

国家責任条文第32条: 国内法を理由として、国際違法行為に伴う義務を免れることができないこととの関係が問題となる。

※各規定の詳しい解釈、本件への適用及び相互関係については、法的主張と違憲違法構造の整理で検討する。

本件との関係

本資料は、2011年当時に行われた辞職勧告決議そのものではない。

本資料が示しているのは、2025年に人権侵害の検証及び是正を求める陳情書が提出された後、須賀川市議会事務局及び関係部署が、どのような問題設定で弁護士相談を行い、どのような回答を得たのかという事実である。

特に重要なのは、次の記載である。

加えて、逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない。

本件では、刑事裁判の判決前から、議会による辞職勧告決議が繰り返された。
第1回辞職勧告決議は勾留中に、第2回辞職勧告決議は初公判前に行われた。
その後も、第3回及び第4回の辞職勧告決議が行われた。

したがって、本資料は、判決前の有罪視、無罪推定の侵害、適正手続の保障、議会事務局の関与、2025年時点における是正義務及びその後の対応を検討する上で重要な資料である。

また、本件相談に須賀川市社会福祉協議会の無料法律相談枠が利用されたことは、公的機関の内部対応のために、市民向け制度が使用された可能性を示す。

この点は、相談枠の制度趣旨、目的外利用の有無及び公金支出との関係を検討する上でも重要である。

関連資料

関連するページ:
事件の記録と検証 第4部 無罪推定の侵害
事件の記録と検証 第5部 救済を求める活動
法的主張と違憲違法構造の整理

関連する証拠記事:
2011年10月26日付 第1回辞職勧告決議
2011年12月1日付 第2回辞職勧告決議
2012年2月9日付 第3回辞職勧告決議
2012年3月1日付 第4回辞職勧告決議
2025年4月3日付 申入書・陳情書
2025年4月28日付 須賀川市回答
2025年4月28日付 須賀川市議会回答
須賀川市社会福祉協議会の無料法律相談枠の利用に関する資料

関連する時系列:
2011年10月26日 第1回辞職勧告決議
2011年12月1日 第2回辞職勧告決議
2012年2月9日 第3回辞職勧告決議
2012年3月 第4回辞職勧告決議
2025年4月3日 過去の対応の検証及び是正を求める申入れ
2025年4月19日 弁護士相談の実施
2025年4月23日 議会事務局による相談結果の内部報告
2025年4月28日 須賀川市及び須賀川市議会の回答

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