資料の概要
資料名:
自由権規約委員会 一般的意見32号
正式名称:
General Comment No. 32, Article 14: Right to equality before courts and tribunals and to a fair trial
略称:
一般的意見32号、GC32
対象条文:
自由権規約(ICCPR)第14条
本記事で扱う項目:
第30項
原文
IV. PRESUMPTION OF INNOCENCE
30. According to article 14, paragraph 2 everyone charged with a criminal offence shall have the right to be presumed innocent until proven guilty according to law.
The presumption of innocence, which is fundamental to the protection of human rights, imposes on the prosecution the burden of proving the charge, guarantees that no guilt can be presumed until the charge has been proved beyond reasonable doubt, ensures that the accused has the benefit of doubt, and requires that persons accused of a criminal act must be treated in accordance with this principle.
It is a duty for all public authorities to refrain from prejudging the outcome of a trial, e.g. by abstaining from making public statements affirming the guilt of the accused.
Defendants should normally not be shackled or kept in cages during trials or otherwise presented to the court in a manner indicating that they may be dangerous criminals.
The media should avoid news coverage undermining the presumption of innocence.
Furthermore, the length of pre-trial detention should never be taken as an indication of guilt and its degree.
The denial of bail or findings of liability in civil proceedings do not affect the presumption of innocence.
和訳
IV 無罪推定
30 第14条第2項によれば、刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪と証明されるまでは、無罪と推定される権利を有する。
無罪推定は、人権の保護にとって基本的なものであり、訴追側に起訴事実を証明する責任を課し、起訴事実が合理的疑いを超えて証明されるまではいかなる有罪も推定されてはならないことを保障し、被告人が疑いの利益を受けることを確保し、刑事上の行為で訴追された者がこの原則に従って扱われなければならないことを要求する。
すべての公的機関は、たとえば、被告人の有罪を断定する公的発言を控えることによって、裁判の結果を予断しない義務を負う。
被告人は、通常、裁判中に手錠をかけられたり、檻の中に置かれたり、又は危険な犯罪者である可能性を示すような態様で裁判所に示されたりしてはならない。
報道機関は、無罪推定を損なうような報道を避けるべきである。
さらに、未決拘禁の期間の長さは、有罪であること又はその程度を示すものとして扱われてはならない。
保釈の拒否又は民事手続における責任認定は、無罪推定に影響を及ぼさない。
採択主体:
国際連合自由権規約委員会
採択年:
2007年
資料の種類:
国際人権条約の解釈指針
取得経路:
国連高等弁務官事務所(OHCHR)ホームページより取得
掲載形式:
原文PDF及び和訳、要旨及び本件との関係を整理
一般的意見について:
一般的意見とは、国際人権条約の実施を監視する条約機関が、条約の各規定の意味内容や締約国に求められる義務について示す解釈指針である。
自由権規約委員会の一般的意見は、自由権規約そのものの条文ではない。
しかし、自由権規約の解釈及び適用を理解する上で、重要な国際的解釈資料である。
本記事で扱う一般的意見32号は、自由権規約第14条について、裁判所の前の平等、公正な裁判、刑事手続上の保障、無罪推定などをどのように理解すべきかを示した資料である。
原文資料:
Skip to PDF contentこの資料で確認できる事実
本資料は、自由権規約委員会が、自由権規約第14条について示した一般的意見である。
ここでいう一般的意見とは、自由権規約委員会が、自由権規約の各条文の意味内容や、締約国に求められる義務について示す解釈指針である。
一般的意見は、自由権規約そのものの条文ではない。
しかし、自由権規約をどのように解釈し、どのように適用すべきかを理解するための重要な国際的資料である。
本記事で扱う一般的意見32号は、自由権規約第14条に関する解釈指針である。
自由権規約第14条は、裁判所及び tribunal(法廷)の前の平等、公正な裁判を受ける権利、刑事手続における最低限の保障、無罪推定などを定めている。
その中で、第14条第2項は、刑事上の罪に問われている者は、法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定されると定めている。
本記事で扱う一般的意見32号第30項は、この無罪推定について説明する部分である。
第30項は、無罪推定について、単に裁判所内部の判断基準にとどまらないものとして説明している。
同項は、刑事責任についての立証責任は検察側にあり、疑いがある場合には被告人の利益に解釈されなければならないという趣旨を示している。
また、有罪が法に基づいて証明されるまでは、いかなる有罪も推定されてはならないことを示している。
さらに重要なのは、同項が、「すべての公的機関は、たとえば、被告人の有罪を断定する公的発言を控えることによって、裁判の結果を予断しない義務を負う。」と述べている点である。
この点により、無罪推定は、裁判官や検察官だけでなく、行政機関、立法機関、地方公共団体、地方議会など、公的な権限又は公的立場を持つ機関の言動にも関係する規範として理解される。
したがって、本資料からは、判決前に公的機関が有罪を前提とするような発言、決議、表示、扱いを行うことが、自由権規約第14条第2項の無罪推定との関係で問題となることが確認できる。
また、一般的意見32号第30項は、無罪推定に関する重要な参照事例として、Gridin v. Russian Federation 及び Cagas, Butin and Astillero v. Philippines を挙げている。
Gridin v. Russian Federation は、公的機関関係者による判決前の有罪視発言と無罪推定との関係を理解する上で重要である。
Cagas, Butin and Astillero v. Philippines は、未決段階における身体拘束と無罪推定との関係を理解する上で重要である。
このため、本資料は、本件における第1回辞職勧告決議及び第2回辞職勧告決議を、自由権規約第14条第2項の無罪推定との関係で検討するための中心的な規範資料である。
重要な記載
本資料で特に重要なのは、無罪推定が、刑事裁判における裁判官の内心だけを規律するものではなく、公的機関全体に対して、裁判結果の予断を避ける義務を課している点である。
一般的意見32号第30項は、無罪推定について、まず、刑事責任の立証責任が検察側にあることを確認している。
また、疑いがある場合には被告人の利益に解釈されなければならないこと、有罪が法に基づいて証明されるまでは有罪を推定してはならないことを示している。
さらに、刑事上の行為で訴追された者は、この原則に従って扱われなければならないことを求めている。
本件との関係で最も重要なのは、その後に示されている、公的機関に関する部分である。
同項は、すべての公的機関に、裁判の結果を予断しない義務があると述べている。
原文の “prejudging the outcome of a trial” は、単に有罪を明示的に断定する場合だけを意味するものではない。
裁判所が最終的に判断すべき刑事責任や裁判結果について、公的機関が判決前に先取りするような発言、表示、決議又は扱いを行うこと全体が問題となる。
したがって、本記事では、この点を「裁判結果の予断」と表現する。
その上で、本件の辞職勧告決議との関係では、判決前に有罪を前提とするような公的意思表示が行われたかどうかが、具体的な問題となる。
この「すべての公的機関」という点が重要である。
無罪推定は、裁判所だけの問題ではない。
また、刑事裁判の判決文だけの問題でもない。
公的機関が、刑事上の罪に問われている者について、判決前に裁判結果を予断するような発言、決議、表示、扱いを行った場合、それ自体が無罪推定との関係で問題となる。
この点を理解する上で重要なのが、一般的意見32号第30項が参照している Gridin v. Russian Federation である。
同事件では、高位の法執行機関関係者による公的発言が、申立人を有罪であるかのように扱い、それが広く報道されたことが問題とされた。
自由権規約委員会は、このような公的発言が無罪推定との関係で問題となることを前提に検討している。
この事例は、無罪推定が、裁判所内の判断だけでなく、公的機関による外部的・社会的な有罪視にも関係することを示している。
本件では、須賀川市議会が、刑事裁判の判決前に、辞職勧告決議という公的な意思表示を行っている。
したがって、Gridin v. Russian Federation は、本件において、公的機関による判決前の裁判結果の予断を検討する上で重要な参照事例である。
また、一般的意見32号第30項が参照している Cagas, Butin and Astillero v. Philippines も重要である。
同事件では、保釈の拒否と無罪推定との関係が問題となった。
一般的意見32号第30項は、保釈の拒否は無罪推定に影響を及ぼさないと整理している。
このことは、身体拘束や保釈に関する判断が存在することを理由に、本人が有罪であるかのように扱ってよいことにはならないことを示している。
本件では、第1回辞職勧告決議が、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で行われている。
したがって、Cagas, Butin and Astillero v. Philippines は、身体拘束中であることを理由に、無罪推定の保障が弱められるわけではないことを確認する上で重要である。
地方議会による辞職勧告決議が、法的拘束力を持たない勧告にとどまるとしても、その決議が判決前に裁判結果を予断するような公的意思表示であった場合、自由権規約第14条第2項との関係で問題となり得る。
ここで問題となるのは、辞職勧告決議によって直ちに議員資格を失ったかどうかだけではない。
また、その決議が刑事判決の結論に現実に影響したかどうかだけでもない。
判決前に、公的機関である地方議会が、裁判結果を予断するような公的意思表示を行ったこと自体が、一般的意見32号第30項の示す無罪推定の要請に照らして問題となる。
本件の具体的文脈では、それが有罪を前提とするような辞職勧告決議であったかどうかが問題となる。
この点は、本件における第1回辞職勧告決議及び第2回辞職勧告決議を検討する上で中心的な意味を持つ。
この資料から生じる疑問
1 無罪推定は、裁判所だけを拘束する原則なのか
一般的意見32号第30項は、すべての公的機関が裁判結果を予断することを控えるべきであるという趣旨を示している。
このことから、無罪推定は、裁判官だけに関係する原則ではない。
行政機関、立法機関、地方公共団体、地方議会など、公的な立場にある機関も、判決前に有罪を前提とするような扱いをしてはならない。
したがって、本件で問題となる須賀川市議会の辞職勧告決議についても、単に「裁判所ではないから無罪推定とは関係がない」と整理することはできない。
2 Gridin v. Russian Federation は、本件とどのように関係するのか
Gridin v. Russian Federation では、高位の法執行機関関係者による公的発言が、申立人を有罪であるかのように扱い、それが広く報道されたことが問題とされた。
この事例は、無罪推定が、裁判所の判決だけでなく、公的機関による外部的な有罪視にも及ぶことを示している。
本件では、須賀川市議会が、刑事裁判の判決前に辞職勧告決議を可決している。
辞職勧告決議は、単なる私人の発言ではなく、地方議会という公的機関による公的意思表示である。
したがって、Gridin v. Russian Federation は、本件において、判決前の公的有罪視を検討する上で重要な参照事例となる。
3 Cagas, Butin and Astillero v. Philippines は、本件とどのように関係するのか
Cagas, Butin and Astillero v. Philippines は、保釈の拒否と無罪推定との関係を理解する上で重要な参照事例である。
一般的意見32号第30項は、保釈の拒否は無罪推定に影響を及ぼさないと整理している。
このことは、保釈が認められないことや、未決段階で身体拘束を受けていることを理由として、本人が有罪であるかのように扱ってよいことにはならないことを示している。
本件では、第1回辞職勧告決議が、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で行われている。
本人が身体拘束を受けていたという事情は、むしろ防御や弁明の機会が制約されていたことを意味する。
したがって、身体拘束中であることを理由に、公的機関が有罪を前提とするような意思表示を行ってよいことにはならない。
この点で、Cagas, Butin and Astillero v. Philippines は、第1回辞職勧告決議の問題を検討する上で重要である。
4 Gridinに照らせば、法的拘束力の有無は問題の核心ではないのではないか
地方議会の辞職勧告決議は、一般に、対象者の議員資格を直ちに失わせる法的効果を持つものではないと説明される。
しかし、一般的意見32号第30項が問題としているのは、公的機関が判決前に裁判結果を予断することを控えるべきであるという点である。
同項が参照する Gridin v. Russian Federation では、法的拘束力を持つ処分ではなく、公的機関関係者による発言が無罪推定との関係で問題とされた。
したがって、Gridinに照らせば、無罪推定上問題となるのは、当該行為に法的拘束力があるかどうかだけではない。
問題の核心は、公的機関が、判決前に裁判結果を予断するような発言、表示、決議又は扱いを行ったかどうかである。
本件では、第1回辞職勧告決議が、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で行われている。
また、第2回辞職勧告決議は、起訴後ではあるものの、初公判前、判決前に行われている。
したがって、これらの辞職勧告決議については、法的拘束力がないという形式面だけではなく、公的機関である須賀川市議会が、判決前に裁判結果を予断するような公的意思表示を行ったものではないかが問題となる。
本件の具体的文脈では、それは、判決前に有罪を前提とするような辞職勧告決議が行われた問題として現れている。
5 刑事裁判への現実的影響がなければ、問題はないのか
本件では、辞職勧告決議が刑の確定に影響するとは思えないという趣旨の整理が示されている。
しかし、一般的意見32号第30項の問題は、刑事判決への現実的影響の有無だけに限定されない。
もちろん、公的機関による有罪視が、供述形成、公判廷での認否、証拠評価、量刑判断などに影響したかどうかは、別途検証すべき重要な問題である。
しかし、それとは別に、判決前に公的機関が裁判結果を予断するような公的意思表示を行ったこと自体が、無罪推定との関係で問題となる。
したがって、刑事裁判への現実的影響が確認できない、又は影響が立証されていないというだけで、無罪推定上の問題が消えるわけではない。
6 地方議会は「公的機関」に含まれるのか
一般的意見32号第30項は、すべての公的機関が裁判結果を予断することを控えるべきであるという趣旨を示している。
地方議会は、住民が選挙した議員によって組織される地方公共団体の議事機関である。
地方自治法第89条第1項は、普通地方公共団体に、その議事機関として、住民が選挙した議員をもって組織される議会を置くことを定めている。
同条第2項は、議会が重要な意思決定に関する事件を議決し、検査、調査その他の権限を行使することを定めている。
同条第3項は、議員が住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならないことを定めている。
したがって、地方議会は、自由権規約上の無罪推定との関係で、公的機関に含まれるものとして検討されるべきである。
本件では、須賀川市議会が、刑事裁判の判決前に辞職勧告決議を行っている。
そのため、須賀川市議会が公的機関として、判決前に裁判結果を予断することを控える義務を負っていたかが問題となる。
7 本人に弁明の機会がなかった場合、問題はさらに重くなるのか
一般的意見32号第30項は、無罪推定との関係で、公的機関による予断を避けるべきことを示している。
本件では、第1回辞職勧告決議が、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で行われている。
本人が身体拘束を受けている時期に、本人が出席できないまま、公的機関である議会が辞職勧告決議を行った場合、無罪推定だけでなく、適正手続及び防御の機会との関係でも問題が生じる。
特に、判決前に有罪を前提とするような公的意思表示が行われ、しかも本人に実質的な弁明の機会が与えられていなかった場合、その問題はより重大になる。
したがって、第1回辞職勧告決議については、無罪推定の問題と、本人欠席、身体拘束、起訴前という手続的状況をあわせて検討する必要がある。
関連法規・条約・国際法上の基準
国際人権条約
自由権規約第14条第2項: 刑事上の罪に問われている者は、法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定される。本記事の中心となる規範である。
自由権規約第14条第1項: 公正な裁判を受ける権利を定める。公的機関による判決前の有罪視が、刑事裁判の公正とどのように関係するのかが問題となる。
自由権規約第2条第3項: 規約上の権利侵害に対する実効的救済を定める。無罪推定の侵害が問題となる場合、国内でどのような救済が与えられるべきかが問題となる。
一般的意見
一般的意見32号30項: 無罪推定について、刑事責任の立証責任、有罪が証明されるまで有罪を推定してはならないこと、及びすべての公的機関が裁判結果を予断することを控えるべきことを示す。
一般的意見31号: 規約上の権利侵害に対する救済義務について示す。過去の公的有罪視について検証及び是正が求められた場合、実効的救済との関係で問題となる。
条約の履行及び解釈に関する基準
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第26条: 効力を有する条約は当事国を拘束し、誠実に履行されなければならない。自由権規約を誠実に履行すべき義務との関係で重要である。
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条: 国内法を理由として条約上の義務を履行しないことを正当化できない。辞職勧告決議に法的拘束力がないことや、地方議会の内部処理であることを理由に、自由権規約上の問題を検討しなくてよいことになるのかが問題となる。
国内法
日本国憲法第31条: 適正手続との関係が問題となる。第1回辞職勧告決議が、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で行われたこととの関係で重要である。
日本国憲法第37条: 公平な裁判所による公正な裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前の公的有罪視が刑事裁判の公正にどのように関係するのかを検討する必要がある。
日本国憲法第98条第2項: 日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを定める。自由権規約及び条約法に関するウィーン条約の国内的意義との関係で重要である。
日本国憲法第99条: 公務員の憲法尊重擁護義務を定める。地方議会議員及び地方公共団体の機関が、憲法及び条約上の人権保障をどのように尊重すべきかが問題となる。
地方自治法第89条第1項から第3項: 地方議会を、住民が選挙した議員により組織される議事機関として位置付け、議会の権限及び議員の誠実な職務遂行を定める。地方議会が公的機関として無罪推定を尊重すべきかを検討する上で重要である。
本件との関係
本件で問題となるのは、有罪判決が後に確定したかどうかだけではない。
また、辞職勧告決議に法的拘束力があったかどうかだけでもない。
一般的意見32号第30項との関係で重要なのは、判決前に、公的機関である須賀川市議会が、裁判結果を予断するような公的意思表示を行ったことである。
本件の具体的文脈では、須賀川市議会の辞職勧告決議が、有罪を前提とするような公的意思表示であったことが問題となる。
第1回辞職勧告決議は、2011年(平成23年)10月26日に行われた。
この時点では、本人は起訴前であり、勾留中であり、本人欠席の状態であった。
それにもかかわらず、須賀川市議会は、飲酒運転による逮捕を理由として辞職勧告決議を可決している。
第1回辞職勧告決議の議事録及び関連資料については、別記事で取り上げている。
そこでは、起訴前、勾留中、本人欠席の段階で、須賀川市議会が辞職勧告決議を行ったこと、また、その決議が単なる手続記録ではなく、飲酒運転による逮捕を前提として議員辞職を求める公的意思表示であったことを確認している。
したがって、第1回辞職勧告決議は、一般的意見32号第30項が示す「すべての公的機関は裁判結果を予断することを控えるべきである」という規範との関係で、判決前の公的有罪視として重大な問題を生じさせる。
第2回辞職勧告決議は、2011年(平成23年)12月1日に行われた。
この時点では、起訴後ではあったが、初公判前であり、判決前であった。
第2回辞職勧告決議についても、議事録及び関連資料を別記事で取り上げている。
そこでは、判決前の段階で、須賀川市議会が再び辞職勧告決議を行ったこと、また、同決議が、本人の説明や全員協議会でのやり取りを踏まえつつ、なお議員辞職を求める公的意思表示として行われたことを確認している。
したがって、第2回辞職勧告決議も、一般的意見32号第30項との関係で、判決前に公的機関が裁判結果を予断するような意思表示を行ったものとして問題となる。
ここで重要なのは、後に有罪判決が確定したことによって、判決前の公的有罪視が当然に正当化されるわけではないという点である。
無罪推定は、有罪判決が確定する前の公的機関の扱いを規律する原則である。
したがって、後に有罪判決が確定したとしても、判決前に公的機関が裁判結果を予断するような公的意思表示を行ったことが、自由権規約第14条第2項との関係で問題となることに変わりはない。
また、辞職勧告決議が刑事裁判の結論に現実に影響したかどうかは、別途検証すべき問題である。
しかし、影響の有無は、公的機関が判決前に裁判結果を予断することを控えるべきであるという無罪推定上の問題とは別次元の問題である。
本件では、2025年(令和7年)の議会内部資料において、「それが刑の確定に影響するとは思えない」という趣旨の意見が記録されている。
しかし、一般的意見32号第30項の観点からすれば、問題は、刑の確定に現実に影響したかどうかだけではない。
公的機関である地方議会が、判決前に裁判結果を予断するような意思表示を行ったこと自体が、無罪推定との関係で問題となる。
本件の具体的文脈では、それは、判決前に有罪を前提とするような辞職勧告決議が行われた問題として現れている。
したがって、本件では、第1回辞職勧告決議及び第2回辞職勧告決議について、すでに確認された決議内容、議事録、議会運営委員会資料、全員協議会に関する資料を踏まえ、一般的意見32号第30項の規範に照らして、判決前の公的有罪視として位置付ける必要がある。
さらに、2025年以降、これらの問題について検証及び是正を求められた須賀川市議会及び須賀川市が、どのような対応を行ったのかも問題となる。
無罪推定上の問題が指摘されたにもかかわらず、実質的な検証又は是正が行われなかった場合、自由権規約第2条第3項及び一般的意見31号が示す実効的救済との関係でも問題となる。
したがって、一般的意見32号第30項は、本件における第1回辞職勧告決議及び第2回辞職勧告決議を検討する規範であると同時に、その後の是正申入れ、陳情、法律相談、市及び議会の対応を検証する出発点となる規範でもある。
関連資料
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関連する証拠記事:
須賀川市議会議会運営委員会会議録―起訴前勾留中の第1回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―初公判前の第2回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後の第3回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後・辞職前の第4回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会提出文書―辞職勧告決議の検証と是正を求めた陳情書
須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正を求める陳情書に関する会派代表者会議協議会結果報告
須賀川市内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談
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関連する規範記事:
規範篇―自由権規約(ICCPR)第14条第2項:無罪推定の原則
規範篇―一般的意見32号第30項:公的機関による判決前の裁判結果の予断禁止
規範篇―一般的意見31号第15項:調査義務と救済不実施それ自体の問題
規範篇―条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条:国内制度を理由に条約義務を免れられるのか
関連する時系列:
2011年(平成23年)10月18日 本件事故が発生したとされた。
2011年(平成23年)10月19日 圓谷年雄が警察署に任意出頭した後、逮捕状に基づいて通常逮捕され勾留開始。現行犯逮捕ではなかった。
2011年(平成23年)10月24日 第1回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2011年(平成23年)10月26日 第1回辞職勧告決議
2011年(平成23年)11月9日 起訴され、その後保釈された。
2011年(平成23年)11月28日 第2回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2011年(平成23年)12月1日 第2回辞職勧告決議
2012年(平成24年)1月16日 有罪判決
2012年(平成24年)1月31日 判決確定
2012年(平成24年)2月7日 第3回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2012年(平成24年)2月9日 第3回辞職勧告決議
2012年(平成24年)2月27日 第4回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2012年(平成24年)3月1日 第4回辞職勧告決議
