2026年7月19日 更新
資料の概要
資料名:
平成23年9月定例会 平成23年10月26日議事録
作成日:
2011年(平成23年)10月26日
作成主体:
須賀川市議会
取得経路:
須賀川市議会ホームページより取得 2025年(令和7年)6月25日印刷
資料の種類:
市議会本会議議事録
対象となる時期:
2011年(平成23年)10月26日
掲載形式:
原文から関連部分を抜粋したPDF
原文PDF:
この資料で確認できる事実
本資料は、2011年(平成23年)10月26日に開かれた、須賀川市議会平成23年9月定例会の本会議議事録である。
議事日程第5号には、日程第1として「議員提出決議案第1号 圓谷年雄議員に対する議員辞職勧告決議について」が掲げられている。
本日の会議に付した事件としても、同じく「議員提出決議案第1号 圓谷年雄議員に対する議員辞職勧告決議について」が記載されている。
出席議員は27名である。
欠席議員は1名であり、1番、圓谷年雄議員と記録されている。
ただし、この時点で圓谷年雄は、逮捕後の起訴前勾留中であった。
したがって、自らの意思により本会議を欠席したのではなく、身柄を拘束され、本会議へ出席できない状態に置かれていた。
本会議の2日前である2011年(平成23年)10月24日午後2時40分から午後3時23分まで、須賀川市議会議会運営委員会が開かれている。
同日午後1時40分から午後2時5分まで、圓谷年雄の立会いによる実況見分が行われていたため、議会運営委員会は実況見分終了から約35分後に開会したことになる。
議会運営委員会では、第1回辞職勧告決議案の文案及び本会議における処理手順が協議された。
当初の文案にあった地元新聞への直接の言及は削除された。
一方、圓谷年雄が道路交通法違反の疑いで逮捕されたことを前提として、政治的・道義的責任、市民感情、議会の権威保持及び名誉回復を理由に辞職を求める構成は維持された。
また、本会議では、提案理由の説明後、質疑、委員会付託及び討論を省略し、決議案を表決する手順が整理された。
2011年(平成23年)10月26日の本会議冒頭において、議長は、欠席通告議員が1番、圓谷年雄議員であること及び出席議員数が定足数に達していることを述べている。
その後、日程第1として、圓谷年雄議員に対する議員辞職勧告決議案が議題とされた。
提出者として、14番議員が登壇し、提案理由を説明している。
提案理由では、議員は市民の負託を受け、市政の進展と市民のしあわせ実現のため、高い倫理観と見識を持って職責を果たさなければならないと述べられている。
その上で、圓谷年雄議員の酒酔い運転の疑いによる逮捕は、あってはならないことであり、議員及び議会に対する信頼を失墜させる行為は断じて許されるものではなく、極めて遺憾であり、怒りを禁じ得ないとの趣旨が述べられている。
さらに、議会として再三にわたり会議を行い、対応について協議してきたこと、圓谷年雄議員の政治的・道義的責任は免れないことから、自らの意思により議員を辞職すべきであるとの決議を行うべきであると説明されている。
提案理由説明後、議長は、議員提出決議案第1号について、質疑、委員会付託及び討論を省略したいと諮っている。
これに対し、「異議なし」の声があり、議長は異議なしと認め、質疑、委員会付託及び討論を省略することを決定している。
その後、議員提出決議案第1号について採決が行われた。
採決は起立により行われ、起立全員であった。
議長は、全員起立であるとして、議員提出決議案第1号が原案のとおり可決されたと宣告している。
本会議は午前10時に開議され、午前10時4分に休憩に入っている。
したがって、第1回辞職勧告決議に関する本会議上の議事は、圓谷年雄が起訴前勾留により出席できない状態で、開議から休憩までの4分間に行われた。
重要な記載
本資料で特に重要なのは、第1回辞職勧告決議が、起訴前の勾留中に行われたことである。
議事録上、圓谷年雄は欠席議員として記録されている。
しかし、圓谷年雄は自らの意思により本会議を欠席したのではなく、逮捕後の起訴前勾留により、本会議へ出席できない状態に置かれていた。
この時点では、起訴もされておらず、刑事裁判も始まっていなかった。
また、議事録上、須賀川市議会が、勾留中の圓谷年雄から事前に事情を聴いたこと、弁明の機会を与えたこと又は反論の機会を確保したことを示す記載はない。
さらに、第1回辞職勧告決議の2日前である2011年(平成23年)10月24日には、議会運営委員会が開かれている。
この議会運営委員会では、逮捕を前提として政治的・道義的責任を問い、辞職を求める決議文案が協議された。
同時に、本会議において、提案理由の説明後、質疑、委員会付託及び討論を省略して表決する手順も整理されていた。
10月24日の議会運営委員会は、同日午後2時5分に終了した実況見分から約35分後の午後2時40分に開会している。
実況見分では、圓谷年雄が実際の走行経路を記憶していないと説明する中で、市役所駐車場から事故現場までの経路及び約11.5キロメートルという距離が捜査資料として記録された。
その同じ日の午後に、議会側では、逮捕を前提とする辞職勧告決議案と採決手順が具体化されていたことになる。
この時間的関係だけから、捜査機関と須賀川市議会が連絡又は連動していたと断定することはできない。
しかし、刑事手続において本人の供述及び事件像が形成されている時期と、議会において本人の政治的・道義的責任を断定して辞職を求める手続が形成された時期とが、同一の起訴前勾留期間中に重なっていたことは確認できる。
本会議では、議会運営委員会で整理された手順に従い、提案理由の説明後、質疑、委員会付託及び討論が省略された。
その後、出席議員全員の起立によって、決議案は原案のとおり可決された。
本会議は午前10時に開議され、午前10時4分に休憩に入っている。
したがって、第1回辞職勧告決議は、圓谷年雄が起訴前勾留により出席できず、弁明又は反論の機会も議事録上確認できない状態で、事前に整理された手順に従い、開議から休憩までの4分間に可決された。
刑事手続上の位置付け
第1回辞職勧告決議が可決された2011年(平成23年)10月26日の時点で、圓谷年雄は起訴されていなかった。
刑事裁判も始まっておらず、裁判所による事実認定及び有罪判断は存在していなかった。
圓谷年雄は、2011年(平成23年)10月19日に逮捕された後、起訴前の身柄拘束下で取調べを受けていた。
同月19日、20日及び22日には司法警察員に対する供述調書が作成された。
同月24日には、圓谷年雄が実際の走行経路を記憶していないと説明する中で実況見分が行われ、市役所駐車場から事故現場までの経路及び約11.5キロメートルという距離が捜査資料として記録された。
その実況見分終了から約35分後に、須賀川市議会議会運営委員会が開かれ、第1回辞職勧告決議案の文案及び本会議における採決手順が整理された。
翌10月25日には、前日の実況見分調書に添付された経路図が圓谷年雄に示され、走行経路、距離及び運転意思等に関する供述調書が作成された。
その翌日の10月26日に、第1回辞職勧告決議が可決された。
その後も起訴前の身柄拘束は継続した。
2011年(平成23年)11月2日には、携帯電話の発着信履歴、第三者による目撃情報及び推定所要時間等を前提として、事故時刻を午後7時40分頃とする検察官面前供述調書が作成された。
同月9日、圓谷年雄は起訴された。
したがって、第1回辞職勧告決議は、供述及び公訴事実が形成されている途中の起訴前勾留期間中に、公的機関である須賀川市議会が本人の政治的・道義的責任を断定し、辞職を求めた公的意思表示である。
この決議自体が、個々の取調べ、供述内容、勾留延長、起訴又は判決に具体的な影響を及ぼしたと、現在確認できる資料だけから断定することはできない。
しかし、第1回辞職勧告決議及びその提案理由が、自由権規約第14条第2項が保障する無罪推定に適合していたかは、刑事裁判への具体的影響の立証とは独立して検証されなければならない。
この資料から生じる疑問
1 法的拘束力のない政治的意思表示であれば、判決前の公的有罪視は許されるのか
辞職勧告決議は、一般に、議員の資格を直ちに失わせる法的拘束力を持つものではなく、議会による政治的意思表示であると説明されることがある。
しかし、本件で問題となるのは、辞職勧告決議によって直ちに議員資格を失ったかどうかだけではない。
問題は、刑事責任が確定していない段階で、公的機関である地方議会が、本人に政治的・道義的責任があると評価し、議員辞職を求める公式な意思表示を行ったことである。
自由権規約(ICCPR)第14条第2項は、刑事上の罪に問われている者について、法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定される権利を保障している。
また、一般的意見32号30項は、すべての公的機関には、刑事裁判の結果を予断しない義務があることを示している。
そうであるならば、辞職勧告決議が国内法上、法的拘束力のない政治的意思表示であるとしても、そのことによって、公的機関が判決前に有罪を前提とする評価を示すことまで許されるのか。
さらに、条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条は、国内法を理由として条約を履行しないことはできないと定めている。
したがって、「辞職勧告決議は政治的意思表示にすぎない」という国内法上の説明によって、自由権規約(ICCPR)第14条第2項が保障する無罪推定の問題を回避できるのかが問われる。
本件では、辞職勧告決議の法的拘束力の有無だけでなく、判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示したこと自体が、無罪推定原則との関係で検証されなければならない。
よって、本件で問われるのは、第1回辞職勧告決議が後の裁判結果に現実に影響を及ぼしたかどうかだけではない。
判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示したこと自体が、自由権規約第14条第2項との関係で独立して成立する問題である。
影響の有無は、この問題とは別の次元で、追加的に検証されるべき事項である。
2 判決前の議会決議は、司法権の所在及び裁判の公平性との関係でどのような問題を生じさせるのか
日本国憲法第76条第1項は、すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属すると定めている。
また、同条第3項は、すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束されると定めている。
本件では、第1回辞職勧告決議が、起訴前勾留により圓谷年雄が本会議へ出席できない段階で行われている。
この時点では、刑事裁判は始まっておらず、裁判所による有罪判断も存在していなかった。
それにもかかわらず、地方議会という公的機関が、飲酒運転による逮捕を理由として辞職勧告決議を可決している。
このような判決前の公的意思表示は、刑事責任の判断が本来司法権に属すること、及び裁判官が外部の影響を受けずに独立して判断すべきこととの関係で問題となる。
したがって、第1回辞職勧告決議については、無罪推定だけでなく、司法権の所在及び裁判の公平性との関係でも検討する必要がある。
3 起訴前勾留により本人が出席できない状態で辞職勧告決議を行うことは適切だったのか
本資料では、圓谷年雄は欠席議員として記録されている。
しかし、圓谷年雄は自らの意思により本会議を欠席したのではなく、起訴前勾留により本会議へ出席できない状態に置かれていた。
この時点では、起訴もされておらず、刑事裁判も始まっていなかった。
須賀川市議会は、本人が身柄を拘束され、出席、説明及び反論を行うことができない状態で、逮捕を前提として政治的・道義的責任を断定し、辞職を求める決議を行った。
この手続は、無罪推定、適正手続、本人の政治的地位及び市民による選挙の負託との関係で、どのように正当化されるのか。
4 逮捕を前提として、断定的な政治的・道義的評価を行うことは許されるのか
提案理由では、酒酔い運転の疑いによる逮捕を前提として、議会に対する信頼を失墜させる行為、極めて遺憾、怒りを禁じ得ない、政治的・道義的責任は免れない、という評価が示されている。
しかし、逮捕は有罪判決ではない。
また、本決議は起訴前に行われた。
有罪判決が確定する前の者は、無罪と推定される。
逮捕を理由として、公的機関が本人の責任を断定的に評価し、辞職を求めることは、無罪推定の原則と整合するのか。
5 政治的・道義的責任という表現によって、無罪推定の問題を回避できるのか
提案理由では、本人の政治的・道義的責任は免れないと述べられている。
しかし、その評価の前提として示されている事実は、酒酔い運転の疑いによる逮捕である。
刑事責任が確定していない段階で、逮捕されたという事実から政治的・道義的責任を導き、辞職を求めることは、実質的に有罪を前提とする評価にならないのか。
仮に辞職勧告決議が法的拘束力を持たない政治的意思表示であるとしても、公的機関が判決前に有罪を前提とする評価を示した場合、自由権規約(ICCPR)第14条第2項及び一般的意見32号30項との関係で、なお問題が残るのではないか。
6 本人の弁明又は反論の機会は、どの段階で確保されていたのか
圓谷年雄は、第1回辞職勧告決議が可決された時点で、起訴前勾留により本会議へ出席できない状態に置かれていた。
本会議では、本人に対する決議案について提案理由が説明された後、質疑、委員会付託及び討論が省略され、直ちに採決が行われている。
また、議事録及び議会運営委員会会議録上、決議前に須賀川市議会が勾留中の本人から事情を聴いたこと、本人へ決議案を示したこと、弁明書の提出機会を与えたこと又は代理人を通じた反論の機会を確保したことを示す記載は確認できない。
本人の政治的地位、名誉、社会的評価及び議員活動に重大な影響を及ぼし得る決議について、本人の弁明又は反論の機会は、いつ、どのような方法で保障されていたのか。
7 質疑、委員会付託及び討論を省略することは適切だったのか
本資料では、議長が、質疑、委員会付託及び討論を省略したいと諮り、異議なしとされている。
その結果、本決議案については、質疑、委員会付託及び討論を省略して採決されている。
辞職勧告決議は、形式上は法的拘束力を持たないとしても、本人の政治的地位、名誉、社会的評価及び議員活動に重大な影響を及ぼし得る。
そのような決議について、質疑、委員会付託及び討論を省略することは、適正手続及び議会の慎重審議の観点から適切だったのか。
8 事前に処理手順を整理し、開議から4分間で可決した手続は、十分な検討といえるのか
第1回辞職勧告決議の2日前に開かれた議会運営委員会では、決議文案だけでなく、提案理由説明後に質疑、委員会付託及び討論を省略して採決する手順が整理されていた。
本会議は午前10時に開議され、午前10時4分に休憩に入っている。
この4分間に、提案理由の説明、質疑、委員会付託及び討論の省略、採決並びに可決が行われた。
しかも、本人は起訴前勾留により本会議へ出席できず、弁明又は反論の機会も議事録上確認できない状態にあった。
このような手続により、本人に関する事実、刑事手続の段階、無罪推定、本人の権利利益及び市民による選挙の負託について、十分かつ慎重な検討が行われたといえるのか。
9 全員起立による可決は、どのような意味を持つのか
本資料では、採決において起立全員であり、原案のとおり可決されたことが記録されている。
圓谷年雄が起訴前勾留により本会議へ出席できない状態で、出席議員全員が賛成して決議が可決されたことになる。
これは、第1回辞職勧告決議が、個別議員の発言や一部会派の判断にとどまらず、当時の須賀川市議会としての意思として示されたことを意味する。
このような全会一致の決議が、本人の名誉、社会的評価、政治的地位及びその後の社会的評価に与えた影響をどのように評価すべきか。
10 議会は、本人の権利利益と市民の負託をどのように検討したのか
提案理由では、市民の負託、議会への信頼、政治的責任及び道義的責任が述べられている。
しかし、本人もまた、市民による選挙を通じて議員に選出されていた。
須賀川市議会は、本人に投票した市民の意思、本人の政治的地位、本人の弁明の機会及び無罪推定の原則を、どのように検討したのか。
11 その後、須賀川市議会は本決議を検証したのか
本決議は、その後も撤回されていない。
2025年(令和7年)4月3日には、辞職勧告決議の検証及び是正を求める陳情書が提出された。
須賀川市議会は、第1回辞職勧告決議の内容、手続、影響及び法的評価について、客観的な調査及び検証を行ったのか。
関連法規・条約・国際法上の基準
国内法
日本国憲法第13条: 個人の尊重及び人格的利益との関係が問題となる。辞職勧告決議が、本人の名誉、社会的評価及び政治的地位に与えた影響が問題となる。
日本国憲法第31条: 適正手続の保障との関係が問題となる。本件では、本人に弁明又は反論の機会が十分に確保されていたかだけでなく、公的機関である市議会が、刑事裁判の判決前に有罪を前提とする評価を示したこと自体が、適正手続及び無罪推定の趣旨と整合するのかが問題となる。
日本国憲法第32条: 裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示し、その評価が報道及び社会的評価を通じて広がった場合に、その後の刑事裁判において、本人が公平な司法判断を受ける地位が十分に保障されていたといえるのかが問題となる。
日本国憲法第37条第1項: 刑事被告人が公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前の公的機関による有罪視が、捜査、公判及び判決に外部的圧力を及ぼし得る状況の中で、公平な裁判が保障されていたといえるのかが問題となる。
日本国憲法第37条第2項:刑事被告人に、すべての証人を審問する十分な機会を保障している。本件判決書の「証拠の標目」には第三者5名の供述調書が掲げられているが、供述者本人に対する証人尋問及び圓谷年雄側からの反対尋問は行われていない。そのうち2名が第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した市議会議員であったことを踏まえ、供述内容及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかが問題となる。
日本国憲法第76条第3項: 裁判官が独立して職権を行使し、憲法及び法律のみに拘束されるべきこととの関係が問題となる。刑事責任の有無を判断する権限を有しない市議会が、判決前に犯罪事実を前提とする評価を示したことは、裁判所による司法判断を先取りし、司法権の独立及び裁判の公平性との関係で問題となる。
日本国憲法第98条第2項: 日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守する必要があることを定めている。日本が批准した自由権規約を誠実に履行すべき義務との関係が問題となる。
日本国憲法第99条: 市議会議員その他の公務員が負う憲法尊重擁護義務との関係が問題となる。公的機関である市議会が、判決前に有罪を前提とする評価を示したことが、憲法尊重擁護義務と整合するのかが問題となる。
刑事訴訟法第336条: 犯罪の証明がない場合には無罪判決をしなければならないことを定めている。刑事裁判における無罪推定の原則との関係が問題となる。
国際人権条約 自由権規約(ICCPR)
自由権規約第14条第1項: 公平な裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示し、その評価が報道及び社会的評価を通じて広がった場合に、その影響下で行われた刑事手続及び裁判が、公正な裁判を受ける権利を十分に保障したものといえるのかが問題となる。
自由権規約第14条第2項: 刑事上の罪に問われている者は、法律により有罪と認められるまでは無罪と推定される権利を保障される。本件では、刑事裁判の判決前に、公的機関である市議会が有罪を前提とする評価を示したこと自体が、無罪推定の原則との関係で問題となる。
自由権規約第14条第3項(e):刑事被告人に対し、自己に不利な証人を尋問し又は尋問させる権利を保障している。本件では、判決書に掲げられた第三者5名の供述調書について、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問が行われていないこととの関係が問題となる。
条約の履行及び解釈に関する基準
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第26条: 効力を有する条約は当事国を拘束し、誠実に履行されなければならない。日本が批准した自由権規約を誠実に履行すべき義務との関係が問題となる。
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条: 国内法を理由として、条約上の義務を履行しないことを正当化できない。地方議会による行為であること、議会内部の問題であること、又は国内制度上の手続が定められていないことを理由として、自由権規約上の義務との関係を検討しなくてよいことになるのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号30項: 公的機関が、刑事裁判の結果を先取りする形で被告人の有罪を表明してはならないとする国際基準との関係が問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号39項:武器対等及び実効的防御の保障として、不利益な証人を尋問し、その供述を争う適切な機会が与えられなければならないことを示している。本件では、辞職勧告決議に賛成した市議会議員2名を含む第三者5名の供述内容及び信用性を、公判廷において実質的に争う機会が保障されていたかが問題となる。
※各規定の詳しい解釈、本件への適用及び相互関係については、法的主張と違憲違法構造の整理で検討する。
本件との関係
本件では、2011年(平成23年)10月26日、圓谷年雄が起訴される前の段階で、須賀川市議会において第1回辞職勧告決議が可決された。
この時点で、刑事裁判は始まっておらず、裁判所による事実認定及び有罪判断も存在していなかった。
圓谷年雄は、逮捕後の起訴前勾留により、本会議へ出席できない状態に置かれていた。
議事録及び議会運営委員会会議録上、決議前に、須賀川市議会が勾留中の圓谷年雄から事情を聴いたこと、決議案を示したこと、弁明書の提出機会を与えたこと又は代理人を通じた反論の機会を確保したことを示す記載は確認できない。
第1回辞職勧告決議の2日前である2011年(平成23年)10月24日には、議会運営委員会が開かれている。
この議会運営委員会は、同日午後2時5分に終了した実況見分から約35分後の午後2時40分に開会した。
議会運営委員会では、逮捕を前提として政治的・道義的責任を問い、辞職を求める決議文案と、提案理由説明後に質疑、委員会付託及び討論を省略して採決する手順が整理された。
その2日後の本会議では、この手順に従って提案理由説明、質疑、委員会付託及び討論の省略並びに採決が行われた。
決議案は、出席議員全員の起立によって可決された。
本会議は午前10時に開議され、午前10時4分に休憩に入っている。
ここで重要なのは、逮捕は有罪判決ではなく、刑事責任を確定させる処分でもないという点である。
それにもかかわらず、本決議の提案理由では、逮捕を前提として、「議会に対する信頼を失墜させる行為は断じて許されるものではなく」「政治的、道義的責任は免れるものではない」とする評価が示され、圓谷年雄に議員辞職を求めている。
問題となるのは、辞職勧告決議に法的拘束力があるかどうかだけではない。
刑事責任が確定していない段階で、公的機関である地方議会が、逮捕を前提として本人の責任を断定的に評価し、辞職を求める公式な意思表示を行ったこと自体が、自由権規約第14条第2項及び一般的意見32号30項との関係で独立して検証されなければならない。
その後、本件刑事裁判の判決書の「証拠の標目」には、司法警察員に対する第三者3名の各供述調書及び検察官に対する第三者2名の各供述調書が掲げられた。
第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側からの反対尋問は行われていない。
このうち、検察官に対する供述調書を作成された2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。
この事実だけから、市議会議員2名の供述が虚偽であったこと、供述調書に証拠能力がなかったこと又は第1回辞職勧告決議が刑事裁判へ直接影響したことを断定することはできない。
また、証人尋問及び反対尋問が行われなかったことだけから、直ちに証人審問権侵害が確定するものでもない。
しかし、刑事責任確定前に辞職を求める公的意思表示に賛成した市議会議員の供述調書が、同じ刑事事件の検察側証拠となり、その供述者本人の記憶、認識、供述経過、決議への関与、立場及び信用性について、公判廷における証人尋問及び反対尋問による吟味が行われなかったことは、実質的な検証を必要とする。
各供述調書の形式上の証拠採用根拠又は弁護側の同意の有無と、不利益な供述の内容及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかは、区別して判断されなければならない。
したがって、本資料は、第1回辞職勧告決議自体の無罪推定との適合性を検証する資料であるとともに、その後の刑事手続における公正な裁判、適正手続及び証人審問権との接続を検証するための重要な資料でもある。
関連資料
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関連する時系列:
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2012年(平成24年)2月9日 第3回辞職勧告決議
2012年(平成24年)2月27日 第4回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2012年(平成24年)3月1日 第4回辞職勧告決議
English version:
Sukagawa City Council Minutes—Text and Voting Record of the First Recommendation for Resignation
