憲法の力を信じて。

事件の記録と検証 第5部

2026年7月19日 更新

第5部 救済を求める活動の経過

判決確定後の申立て・是正要求と実効的救済の問題

はじめに

本第5部では、判決確定後に、圓谷年雄がどのように救済を求めてきたのか、その経過を整理する。

第1部では、事故発生から議員辞職までの確認できる事実を整理した。

第2部では、事故発生、逮捕、供述調書等の作成、二つの議会運営委員会、辞職勧告決議、起訴、公判、有罪判決、判決確定及び議員辞職に至るまでの時系列を整理した。

第3部では、有罪認定に残る合理的疑い、供述形成過程、記憶欠落、事故時刻、運転代行への連絡、走行経路、目撃情報、公判での認否、量刑理由及び証人審問権に関する問題を検証した。

第4部では、判決確定前に須賀川市議会が有罪を前提とする辞職勧告決議を行い、その状況の下で刑事手続が進行したことを、無罪推定、公正な裁判、適正手続及び証人審問権との関係から整理した。

本第5部では、その後の問題を扱う。

すなわち、判決確定後も、無罪推定侵害、公正な裁判、適正手続、不利益供述強要禁止及び証人審問権に関する問題について、実質的な検証又は救済が行われていないことを扱う。

また、圓谷年雄がこれに対し、日本弁護士連合会への人権救済申立て、裁判所への意見書及び申入書等の提出、再審請求、人権侵害救済・是正申立て、須賀川市及び須賀川市議会への是正要求、住民監査請求並びに住民訴訟等を行ってきた経過を整理する。

本件判決書の「証拠の標目」には、司法警察員に対する第三者3名の各供述調書及び検察官に対する第三者2名の各供述調書が掲げられている。

第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問は行われていない。

このうち、検察官に対する供述調書を作成された2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

判決書のみからは、各供述調書が採用された具体的な刑事訴訟法上の根拠、弁護側の同意の有無又は各供述調書が具体的にどの事実の認定に用いられたのかは確認できない。

したがって、証人尋問及び反対尋問が行われなかったことだけから、直ちに証人審問権侵害又は供述調書の証拠能力の欠如を断定するものではない。

しかし、形式上の証拠採用根拠又は同意の有無と、供述者本人の記憶、認識、供述経過、決議への関与、立場及び信用性を反対尋問によって実質的に争う機会が保障されていたかは、区別して検証されなければならない。

本件の問題は、過去の一時点で終了したものではない。

判決前の公的有罪視が存在し、その状況の下で刑事手続が進行し、さらに第三者供述を争う実質的な機会に関する疑問が残されているにもかかわらず、これらの人権問題について実効的救済が与えられていないのであれば、問題は現在も継続している。


なぜ今も救済を求めるのか

本件については、2012年(平成24年)1月31日に有罪判決が確定している。

しかし、判決が確定したことによって、判決前の無罪推定侵害が当然に消滅するわけではない。

また、判決が確定したことによって、判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を行った事実が遡って正当化されるわけでもない。

第4部で整理したとおり、第1回辞職勧告決議は、起訴前の勾留中に行われた。

その2日前の2011年(平成23年)10月24日には議会運営委員会が開かれ、逮捕を前提として辞職を求める決議文案と、質疑、委員会付託及び討論を省略して採決する手順が整理されていた。

第2回辞職勧告決議は、第1回公判前かつ有罪判決前に行われた。

その3日前の同年11月28日には議会運営委員会が開かれ、再度辞職を求める理由、本人除斥、提案理由説明、質疑及び討論の省略、採決並びに可決後の告知手順が整理されていた。

その状況の下で、身柄拘束、取調べ、供述形成、起訴、公判での認否及び有罪判決が進行した。

さらに、判決書の「証拠の標目」には、第三者5名の供述調書が掲げられている。

そのうち2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問は行われていない。

この事実だけから、供述調書に証拠能力がなかったこと、各供述が虚偽であったこと又は辞職勧告決議が刑事裁判へ直接影響したことを断定することはできない。

しかし、刑事責任確定前に辞職を求めた公的機関の構成員による供述調書が、同じ刑事事件の検察側証拠となり、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問を経ないまま、有罪判決の証拠構造に組み込まれていたことは、実質的な検証を必要とする事情である。

したがって、判決確定後であっても、本件刑事手続が適正であったのか、無罪推定及び公正な裁判を受ける権利が実質的に保障されていたのか、また、不利益な第三者供述を争う適切な機会が保障されていたのかについて、検証される必要がある。

圓谷年雄が現在も救済を求めているのは、過去を蒸し返すためではない。

公的機関による無罪推定侵害が存在し、その状況の下で刑事手続が進行し、証人審問権に関する具体的な疑問も残されているにもかかわらず、現在に至るまで実質的な検証及び救済が行われていないからである。


救済を求める根拠

本件で求めている救済は、単なる感情的な名誉回復ではない。

その根拠は、日本国憲法及び国際人権法にある。

自由権規約(ICCPR)第14条第2項は、刑事上の罪に問われている者について、法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定される権利を保障している。

同条第1項は、独立かつ公平な裁判所による公正な審理を受ける権利を保障している。

同条第3項(e)は、被告人に対し、不利益な証人を尋問し又は尋問させ、自己に有利な証人の出席及び尋問を、不利益な証人と同じ条件で求める権利を保障している。

一般的意見32号39項は、この保障について、武器対等の原則の適用として、被告人及び弁護人に、不利益な証人を尋問し、その供述を争う適切な機会が与えられなければならないことを示している。

また、ICCPR第14条第3項(g)は、自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されない権利を保障している。

憲法第31条は適正手続を、同第37条第1項は公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利を保障している。

憲法第37条第2項は、刑事被告人に対し、すべての証人を審問する十分な機会を保障している。

本件では、判決書の「証拠の標目」に第三者5名の供述調書が掲げられているが、この5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問は行われていない。

そのうち2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

したがって、各供述調書の証拠採用根拠及び弁護側の同意の有無だけでなく、供述者本人の記憶、認識、供述経過、決議への関与、立場及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかを検証する必要がある。

さらに、ICCPR第2条第3項は、規約上の権利を侵害された者に対し、実効的救済を確保する義務を締約国に課している。

一般的意見31号は、規約上の権利が侵害された場合、締約国がアクセス可能かつ実効的な救済を確保しなければならないこと、また、侵害の申立てを調査せず、実効的救済を提供しないことが、それ自体として規約上の問題となり得ることを示している。

日本はICCPRを批准している。

憲法第98条第2項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを定めている。

条約法に関するウィーン条約第27条は、国内法を理由として条約の不履行を正当化することはできないと定めている。

したがって、国内法上の救済手続が限られていること、再審要件に直ちに該当しないこと又は既存制度では扱いにくいことだけを理由として、規約上の権利侵害に対する実質的な調査、判断及び救済を行わないことは許されない。

本件では、無罪推定、公正な裁判、適正手続、不利益供述強要禁止及び証人審問権に関する各問題を区別して判断した上で、ICCPR第2条第3項に基づく実効的救済の内容を検討する必要がある。


須賀川市に対する是正の申入れと、その後の対応

圓谷年雄は、2011年当時の問題を過去の出来事として終わらせるのではなく、現在の須賀川市に対して、その検証と是正を求めている。
その出発点となったのが、2025年(令和7年)4月3日に提出した申入書である。

2025年4月3日 申入書の提出

圓谷年雄は、須賀川市長及び須賀川市議会議長に対し、本件に関する申入書を提出した。

申入書では、2011年当時に行われた辞職勧告決議について、判決確定前に刑事責任の存在を前提とする評価を公的機関が示したものであり、無罪推定原則との関係で重大な問題があることを指摘した。
特に、第1回辞職勧告決議は、起訴前かつ勾留中に行われている。
また、第2回辞職勧告決議は、初公判前かつ有罪判決前に行われている。

圓谷年雄は、これらの対応が、日本国憲法及び市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に照らして、どのように評価されるのかを明らかにするよう求めた。

2025年4月19日 市及び市議会による弁護士相談

申入書の提出後、須賀川市及び須賀川市議会は、2025年(令和7年)4月19日、本件への対応について弁護士相談を行った。

この相談は、市及び市議会が、本件を単なる過去の出来事として扱ったのではなく、申入書を受けた後に、改めて対応方針を検討したことを示している。
しかし、その内部資料には、「逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない」とする見解が記録されている。

逮捕は、有罪判決ではない。
逮捕は、捜査のために行われる身体拘束であり、有罪を意味するものではない。
逮捕されたことを理由として、有罪に近い評価を公的機関が行ってよいとする考え方は、無罪推定原則と両立しない。

2025年4月28日 須賀川市の回答

須賀川市は、2025年(令和7年)4月28日付の回答において、過去の対応について、「適正に処理した」とする趣旨の見解を示した。

この回答の意味は小さくない。須賀川市は、2011年当時の出来事について、単に回答を留保したのではない。
2025年4月3日の申入れを受けた後、市及び市議会は、同月19日、本件への対応について弁護士相談を行った。

相談記録には、次の趣旨の見解が記載されている。

逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない。

そのような検討を経た後、須賀川市は、同月28日、過去の対応について「適正に処理した」とする趣旨の回答を行った。

逮捕は、有罪判決ではない。
逮捕は、捜査のために行われる身体拘束であり、刑事責任が確定したことを意味しない。

それにもかかわらず、逮捕されたことを理由として、公的機関が有罪に近い評価を行うことを許容するのであれば、無罪推定原則は実質的な意味を失う。

したがって、本件で問われるのは、2011年当時の辞職勧告決議だけではない。

判決確定前に行われた有罪前提の評価について、2025年に改めて是正を求められた後も、須賀川市がこれを適正であったと評価し続けることが許されるのかが問われている。

是正を求められた後の不作為――新たな人権侵害の問題

本件で問われるのは、2011年当時の辞職勧告決議だけではない。

市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第2条第3項は、規約上の権利を侵害された者に対し、実効的な救済措置を確保することを求めている。

また、自由権規約委員会の一般的意見31号は、侵害の申立てを調査しないことが、それ自体として別個の規約違反を生じさせ得ること、継続中の侵害を停止することが実効的救済の不可欠な要素であることを明らかにしている。

したがって、本件は、過去の出来事に対する歴史的評価の問題にとどまらない。

無罪推定侵害を具体的に指摘され、是正を求められた後も、十分な調査及び是正を行わず、過去の対応を現在も正当化し続けるのであれば、その不作為自体が、ICCPR第2条第3項との関係で、新たな規約違反を構成する。

2011年当時の侵害を是正しないことによって、2025年以降、新たな人権侵害が生じているのである。


日本弁護士連合会への人権救済申立て

2024年(令和6年)3月7日、圓谷年雄は日本弁護士連合会に対し、本件について人権救済申立て及び再審支援申立てを行った。

申立ての中心は、判決前の公的有罪視、無罪推定侵害、供述形成過程の問題、及び実効的救済不提供であった。

しかし、2024年(令和6年)10月23日、日本弁護士連合会は「支援不相当」との決定を行い、支援を受けるには至らなかった。


裁判所に提出した意見書・申入書等

判決確定後、圓谷年雄は、本件について、裁判所に対し、意見書及び申入書等を提出してきた。

これらの書面で中心としていたのは、単なる刑事訴訟法上の再審要件だけではない。

中心となる主張は、判決前に公的機関である須賀川市議会が有罪前提の辞職勧告決議を行い、その無罪推定侵害の下で、勾留、取調べ、供述変遷、起訴、公判での認否、有罪判決が進行したという点である。

また、事故時刻の変遷、運転代行への連絡、供述形成過程、記憶欠落、判決前の辞職勧告決議に賛成した市議会議員2名の供述調書が刑事判決の証拠標目に掲げられていることなども、本件刑事手続の公正性を検証すべき事情として主張してきた。

つまり、圓谷年雄が裁判所に対して問題提起してきたのは、単に「刑事訴訟法上の再審事由があるか」という点だけではない。

本件刑事手続が、無罪推定侵害という重大な人権侵害の下で進行したことを、憲法及びICCPR上どのように評価するのかを問うものであった。


裁判所による再審請求事件としての取扱い

圓谷年雄が提出した意見書及び申入書等に対し、裁判所は事件番号を付し、再審請求事件として取り扱った。

このことは、裁判所が、提出された書面を司法上まったく無関係なものとして扱ったわけではないことを示している。

しかし、問題は、その後の審理において、圓谷年雄が主張した各人権問題に実質的に応答したのかという点である。

圓谷年雄が問題としてきたのは、単に刑事訴訟法上の再審要件に該当するかという点だけではない。

第一に、第1回及び第2回辞職勧告決議並びにその提案理由自体が、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項が保障する無罪推定に適合していたかという問題である。

第二に、公的有罪視が存在する状況の下で、身柄拘束、取調べ、供述形成、起訴、公判での認否及び有罪判決が進行したことを、憲法第31条、同第37条第1項及びICCPR第14条第1項との関係でどのように評価するかという問題である。

第三に、判決書に掲げられた第三者5名の供述調書について、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問が行われなかったことを、憲法第37条第2項、ICCPR第14条第3項(e)及び一般的意見32号39項との関係でどのように評価するかという問題である。

その第三者5名のうち2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

判決書のみからは、各供述調書の具体的な採用根拠及び弁護側の同意の有無は確認できない。

したがって、圓谷年雄が求めているのは、証人尋問がなかったという一事のみを理由として、供述調書の証拠能力を当然に否定することではない。

求めているのは、形式上の証拠採用根拠又は同意の有無と、不利益な供述の正確性及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかを区別し、対応する憲法及び条約上の規範に基づいて判断することである。

第四に、これらの権利侵害の主張に対し、ICCPR第2条第3項及び一般的意見31号が求める実効的救済が提供されたかという問題である。

したがって、本件を再審請求事件として処理する場合であっても、裁判所には、再審要件への該当性だけでなく、無罪推定、公正な裁判、適正手続、不利益供述強要禁止、証人審問権及び実効的救済に関する法的主張へ、実質的に応答することが求められる。

単に「再審要件に該当しない」「判決は確定している」とするだけでは、これらの独立した法的問題に答えたことにはならない。

第一次再審請求の経過

令和7年4月28日、上述のとおり、再審請求事件として係争した。

令和7年12月12日、福島地方裁判所郡山支部は再審請求を棄却した。

令和8年1月8日、仙台高等裁判所第1刑事部(裁判長裁判官加藤亮、裁判官柴田雅司、裁判官井草健太)は即時抗告を棄却した。

決定理由には「原決定に理由不備はなく、原裁判所の訴訟手続に審理不尽の違法は認められない。憲法違反をいう点は前提を欠き失当である」と記載されている。

令和8年2月6日、最高裁判所第三小法廷(裁判長裁判官平木正洋、裁判官林道晴、裁判官渡辺惠理子、裁判官石兼公博、裁判官沖野眞已)は特別抗告を棄却した。

決定理由には「本件抗告の趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑事訴訟法第433条の抗告理由に当たらない」と記載されている。

以上により、第一次再審請求は、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所のすべての段階で棄却された。

しかし、本サイトの立場からは、この経過において、圓谷年雄が問題としている核心、すなわち無罪推定侵害、公正裁判侵害、不利益供述強要禁止違反、実効的救済義務違反という法的主張について、各審級が実質的に応答したものとは評価できない。

特に、最高裁判所は「憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張」と評価したが、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項との関係で問われるべき実質的問題が審理されないまま形式的に棄却された点は、問題として残る。

質問状兼申入書

圓谷年雄は、裁判所に対して、質問状兼申入書を提出した。

その趣旨は、単に再審を求めるというものにとどまらない。

本件において、判決前の公的有罪視が存在し、その状況の下で刑事手続が進行したことについて、裁判所としてどのように評価するのかを問うものである。

特に、次の点を問題としている。

  1. 須賀川市議会による第1回及び第2回辞職勧告決議は、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項に照らして、無罪推定侵害に当たるのではないか。
  2. その公的有罪視が存在する状況の下で、身柄拘束、取調べ、供述形成、起訴、公判での認否及び有罪判決が進行したことを、憲法第31条、同第37条第1項及びICCPR第14条第1項との関係で、どのように評価するのか。
  3. 判決書の「証拠の標目」に掲げられた第三者5名に対する証人尋問及び反対尋問が行われなかったことを、憲法第37条第2項、ICCPR第14条第3項(e)及び一般的意見32号39項との関係で、どのように評価するのか。
  4. 第三者5名のうち2名が、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であったことを、供述者の立場及び信用性との関係で、どのように評価するのか。
  5. 各供述調書が採用された刑事訴訟法上の根拠、弁護側の同意の有無及び不利益な供述を実質的に争う機会について、どのように確認したのか。
  6. 後に有罪判決が確定したことによって、判決前の公的機関による無罪推定侵害が遡って治癒されるのか。
  7. これらの問題について救済を行わない場合、ICCPR第2条第3項及び一般的意見31号が求める実効的救済義務との関係を、どのように説明するのか。

これらは、抽象的な法律相談ではない。

具体的な刑事事件、具体的な市議会決議、具体的な供述調書、具体的な証拠構造及び具体的な有罪判決に関する問いである。

人権侵害救済・是正申立て

圓谷年雄は、本件について、人権侵害救済・是正申立てを行っている。

この申立ては、事故時刻、運転代行への連絡、呼気濃度及び運転可能性等に関する実体的無罪主張だけを対象とするものではない。

中心となるのは、判決前の公的有罪視、無罪推定侵害、公正な裁判及び適正手続に関する問題、不利益供述強要禁止に関する問題、証人審問権に関する問題並びに実効的救済不提供の問題である。

本件では、刑事責任が確定していない段階で、公的機関である須賀川市議会が有罪を前提とする辞職勧告決議を行い、その状況の下で刑事手続が進行した。

さらに、判決書の「証拠の標目」には、第三者5名の供述調書が掲げられ、そのうち2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

この第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問は行われていない。

各供述調書の具体的な採用根拠及び弁護側の同意の有無は、判決書のみからは確認できない。

したがって、証人審問権侵害を直ちに断定するものではないが、不利益な第三者供述の正確性及び信用性を実質的に争う適切な機会が保障されていたかは、憲法第37条第2項、ICCPR第14条第3項(e)及び一般的意見32号39項との関係で検証されなければならない。

そして、これらの問題について、現在に至るまで実質的な調査、判断及び救済が行われていない。

この点が、人権侵害救済・是正申立ての中心である。


須賀川市議会への是正要求

圓谷年雄は、須賀川市議会に対しても、是正を求めている。

本件の中心にあるのは、須賀川市議会による第1回及び第2回辞職勧告決議である。

第1回決議は起訴前・勾留中に、第2回決議は初公判前・有罪判決前に行われ、いずれも刑事責任が確定していない段階で、市議会が辞職を求める公的意思表示を行ったものである。

さらに、第2回決議では、圓谷年雄が「飲酒運転を認めた」ことや、「在職中に飲酒運転をした」ことを前提とする趣旨の発言がなされている。

これらの決議が、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項に照らして、無罪推定侵害に当たるのではないかが問題である。

また、これらの決議に賛成した市議会議員2名の供述調書が、同じ刑事事件において、検察官に対する供述調書として判決書の証拠標目に掲げられている。

この点からも、本件は単なる議会内の政治的意思表示にとどまらない。

市議会による公的有罪視が、刑事裁判の証拠構造にも接続していた問題である。

したがって、須賀川市議会は、過去の辞職勧告決議について、無罪推定原則、公正裁判保障、適正手続保障との関係で、実質的な検証と是正を行うべきである。

議会に提出した陳情書がホームページに掲載されていないこと

圓谷年雄は、須賀川市議会に対し、本件に関する陳情書を提出した。
しかし、現在確認できる須賀川市議会のホームページ上では、この陳情書は公開されていない。

須賀川市議会のホームページには、他の陳情に関する情報が掲載されている。
それにもかかわらず、本件に関する陳情書が掲載されていない理由は、明らかにされていない。

本件は、2011年当時の辞職勧告決議だけを問題とするものではない。

2025年以降、無罪推定原則の侵害について具体的な指摘と是正要求がなされた後、市及び市議会がその申入れをどのように扱い、市民に対してどのように情報を公開しているのかもまた、検証の対象となる。

他の陳情と異なる取扱いがなされているのであれば、その根拠は説明されなければならない。

是正要求後の対応全体を検証する必要性

2025年4月3日の申入れ以降、須賀川市及び須賀川市議会には、本件について改めて検証し、必要な是正措置を講じる機会が存在した。

しかし、市は、過去の対応を「適正に処理した」とする趣旨の回答を行い、議会は上記対応で放置した。

本件で検証されるべきなのは、個々の対応を切り離した場合の形式的な適否だけではない。

無罪推定原則の侵害を具体的に指摘され、是正を求められた後、市及び市議会が、どのような調査を行い、どのような法的評価を行い、どのような説明及び是正措置を講じたのかを、一連の経過として確認する必要がある。

ICCPR第2条第3項が求める実効的な救済との関係でも、この対応全体が検証されなければならない。


住民監査請求・住民訴訟との関係

圓谷年雄は、本件に関連して、住民監査請求及び住民訴訟にも取り組んできた。

住民監査請求・住民訴訟では、主として公金支出、財務会計行為、怠る事実等が問題となる。

しかし、その背景には、須賀川市議会による辞職勧告決議が憲法及びICCPR上どのような問題を有するのかという、より根本的な問題がある。

本件では、判決前の辞職勧告決議、議事録作成、議会運営、関連支出、過去の対応を現在も適正とする市の姿勢などが問題となっている。

したがって、住民監査請求・住民訴訟は、単なる金銭支出の問題にとどまらず、無罪推定侵害を公的機関がどのように扱ってきたのかを検証する手段でもある。

ただし、本第5部では、住民訴訟の詳細な法的主張までは扱わない。

ここでは、判決確定後も、圓谷年雄が公的機関に対して救済・是正を求め続けている経過の一部として位置づける。

現在の到達点

現在、圓谷年雄は、本件について、次の点を明らかにすることを求めている。

  1. 判決前に須賀川市議会が有罪を前提とする辞職勧告決議を行ったことは、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項に照らして、無罪推定侵害に当たるのではないか。
  2. 第1回及び第2回辞職勧告決議の理由及び採決手順が、事前の議会運営委員会において具体的に整理されていたことを、どのように評価するのか。
  3. 公的有罪視が存在する状況の下で、身柄拘束、取調べ、供述形成、起訴、公判での認否及び有罪判決が進行したことを、憲法第31条、同第37条第1項及びICCPR第14条第1項との関係で、どのように評価するのか。
  4. 判決書の「証拠の標目」に掲げられた第三者5名について、証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問が行われなかったことを、憲法第37条第2項、ICCPR第14条第3項(e)及び一般的意見32号39項との関係で、どのように評価するのか。
  5. 第三者5名のうち2名が、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であったことを、供述者の立場及び信用性との関係で、どのように評価するのか。
  6. 各第三者供述調書が採用された刑事訴訟法上の根拠、弁護側の同意の有無及び不利益な供述を実質的に争う機会が保障されていたかを、どのように確認するのか。
  7. 後に有罪判決が確定したことによって、判決前の公的機関による無罪推定侵害が遡って治癒されるのか。
  8. 第一次再審請求において各審級が示した決定は、これらの憲法及び条約上の法的主張に実質的に応答しているといえるのか。
  9. 救済を行わない場合、ICCPR第2条第3項及び一般的意見31号に照らして、実効的救済不提供の問題が生じないのか。

これらの問いに対して、国家機関、地方公共団体、市議会及び裁判所が実質的に答えることが求められている。

本件は、判決が確定したことだけによって終了した事件ではない。

判決前の公的有罪視、その状況の下で進行した刑事手続、第三者供述を争う実質的な機会に関する疑問及び現在に至るまで実効的救済が与えられていないことを含む、現在進行形の人権問題である。

小括

本第5部では、判決確定後に圓谷年雄が行ってきた救済活動の経過を整理した。

日本弁護士連合会への人権救済申立て、裁判所への意見書及び申入書等の提出、第一次再審請求、質問状兼申入書、人権侵害救済・是正申立て、須賀川市及び須賀川市議会への是正要求、住民監査請求並びに住民訴訟は、いずれも本件の人権問題と、その後の救済不提供を対象としている。

本件の第一の問題は、第1回及び第2回辞職勧告決議並びにその提案理由自体が、ICCPR第14条第2項及び一般的意見32号30項が保障する無罪推定に適合していたかという点である。

第二の問題は、公的有罪視が存在する状況の下で、身柄拘束、取調べ、供述形成、起訴、公判での認否及び有罪判決が進行したことを、憲法第31条、同第37条第1項及びICCPR第14条第1項との関係で、どのように評価するかという点である。

第三の問題は、判決書の「証拠の標目」に掲げられた第三者5名の供述調書について、供述者本人に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問が行われなかったことを、憲法第37条第2項、ICCPR第14条第3項(e)及び一般的意見32号39項との関係で、どのように評価するかという点である。

第三者5名のうち2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。

この事実だけから、供述が虚偽であったこと、供述調書に証拠能力がなかったこと又は辞職勧告決議が刑事裁判へ直接影響したことを断定することはできない。

しかし、刑事責任確定前に辞職を求めた公的機関の構成員による供述調書が、同じ刑事事件の検察側証拠となり、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問を経ないまま、有罪判決の証拠構造に組み込まれていたことは、実質的な検証を必要とする事情である。

第四の問題は、これらの権利侵害の主張に対し、現在に至るまで実質的な調査、判断及び救済が行われていないことである。

後に有罪判決が確定したことは、判決前の公的機関の行為を遡って正当化するものではない。

また、再審請求が棄却されたことだけで、無罪推定、公正な裁判、適正手続、不利益供述強要禁止及び証人審問権に関する各問題へ、実質的に回答したことになるものでもない。

したがって、本件において求められるのは、単なる形式的な回答ではない。

日本国憲法、ICCPR、一般的意見、VCLT、刑事訴訟法及び地方自治法の全体構造に照らし、それぞれの人権問題を区別して判断した上で、どのような説明、是正及び実効的救済が必要であるかを、実質的に検討することである。

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