資料の概要
資料名:
質問状兼申入書について(回答)
文書番号:
8議第20号
作成日:
2026年(令和8年)4月23日
作成主体:
須賀川市議会
発出者:
須賀川市議会議長 佐藤暸二
宛先:
圓谷年雄
対象となる質問状兼申入書:
2026年(令和8年)4月10日付で提出された質問状兼申入書
取得経路:
本人宛に送付された回答文書として取得
資料の種類:
質問状兼申入書に対する須賀川市議会議長名の回答文書
掲載形式:
個人情報等を必要な範囲で非公開処理したPDF
原文PDF:
Skip to PDF contentこの資料で確認できる事実
本資料は、2026年(令和8年)4月10日付で須賀川市長及び須賀川市議会議長に提出された「質問状兼申入書」に対し、同月23日、須賀川市議会議長名で発出された回答文書である。
回答書の文書番号は「8議第20号」であり、事務担当は須賀川市議会事務局議事調査係と記載されている。
回答本文は、次の一文で構成されている。
令和8年4月10日付で提出のありました質問状兼申入書については、議会は法的解釈を示す機関ではないと認識しており、また、現在係争中の事件に関連する内容であるため、弁護士に一任しております。
したがって、本資料からは、須賀川市議会が、同年4月10日付質問状兼申入書について、第一に、議会は法的解釈を示す機関ではないと認識していること、第二に、現在係争中の事件に関連する内容であることを理由として、弁護士に一任していると回答したことを確認できる。
本回答の対象となった4月10日付質問状兼申入書は、一般的又は抽象的な法律相談を求めた文書ではない。
同文書では、須賀川市議会が2011年(平成23年)及び2012年(平成24年)に行った一連の辞職勧告決議並びにその公式記録の維持について、自由権規約(ICCPR)第14条第2項が保障する無罪推定に反するとの具体的な主張が示されていた。
その上で、自由権規約第2条第3項に基づく実効的救済として、権利侵害の調査、法的判断、決議の撤回、公式記録の削除又は訂正、名誉回復及び公的な是正措置が求められていた。
同質問状兼申入書全体には、5項目の質問事項及び3項目の申入事項が記載されていた。
ただし、このうち第2及び第4の質問事項は、須賀川市に対して、その法律相談上の解釈及び地方公共団体としての国際法上の責任に関する見解を求めたものであり、須賀川市議会に直接回答を求めたものではない。
一方、辞職勧告決議及びその公表を維持する具体的な法的根拠、2025年(令和7年)の対応が実効的救済義務を履行したものといえるか、救済を提供しないこと自体が別個の問題となるとの指摘に対する見解、並びに決議の撤回、公式記録の訂正及び公開の場における名誉回復等は、須賀川市議会の判断及び権限と直接関係する事項であった。
しかし、本回答には、須賀川市議会に関係する各質問事項に対する個別の回答は記載されていない。
また、3項目の申入事項について、受け入れるのか、拒否するのか、検討を継続するのかも記載されていない。
本回答には、「現在係争中の事件」の事件名、事件番号及び裁判所は記載されていない。
もっとも、本回答の時期及びその後の関係文書からは、当時係属していた住民訴訟を指すものとみられる。
ただし、本回答には、須賀川市議会自身が行った辞職勧告決議の検証、公式記録の取扱い及び是正措置の要否が、その住民訴訟とどのように関連すると判断されたのかは記載されていない。
また、「弁護士に一任」した事項についても、住民訴訟への対応を一任したのか、法的助言を求めたのか、質問状兼申入書に対する回答作成を一任したのか、又は議会として行うべき事実調査、法的評価及び是正措置の要否に関する判断まで一任したのか、その範囲は記載されていない。
本回答には、質問状兼申入書に示された侵害事実及び法的根拠について、須賀川市議会がどのような調査又は検討を行ったのかも記載されていない。
さらに、須賀川市議会として、人権侵害の有無、実効的救済の必要性並びに議会の権限内で可能な決議の撤回、公式記録の訂正及び名誉回復措置について、どのような決定を行ったのかも示されていない。
重要な記載
本資料の中心的な記載は、
議会は法的解釈を示す機関ではないと認識しており、また、現在係争中の事件に関連する内容であるため、弁護士に一任しております。
という一文である。
この回答には、須賀川市の同日付回答には存在しない、
議会は法的解釈を示す機関ではない
との理由が付加されている。
地方議会が裁判所ではなく、一般的又は抽象的な法律問題について、終局的かつ権威ある法解釈を示す機関ではないこと自体は否定されない。
また、住民から寄せられたあらゆる法律上の質問について、議会が法律相談機関として回答する一般的義務があるわけでもない。
しかし、本件質問状兼申入書で求められていたのは、一般的又は抽象的な法律相談ではない。
須賀川市議会が自ら可決した辞職勧告決議、その理由及び審議過程並びに現在も維持されている公式記録について、憲法、自由権規約その他の法規範に適合していたのかを調査し、是正の要否を判断することが求められていた。
須賀川市議会は、2011年(平成23年)及び2012年(平成24年)当時、本人の刑事責任が未確定であったにもかかわらず、当該刑事事件に関する事実及び評価を前提として、一連の辞職勧告決議を可決し、議会として公的意思を形成した主体である。
辞職勧告決議が刑事責任を確定する司法判断ではなく、政治的又は倫理的な意思表示であるとしても、議会は、刑事事件に関する一定の評価を行い、本人が議員を辞職すべきであるとの結論を公的に示している。
特に、2011年(平成23年)12月1日の第2回辞職勧告決議では、本人が飲酒運転を認めたとの評価が示され、本人が裁判結果を待って進退を判断すると説明したことについて、「社会正義に反する」との評価が示されている。
すなわち、須賀川市議会は、刑事責任が確定する前の段階で、刑事事件に関する事実評価及び本人の対応に対する規範的評価を行い、辞職を求める公的意思決定を行っていた。
その後、当該決議の憲法適合性及び条約適合性が具体的に問われた際に、「議会は法的解釈を示す機関ではない」と述べるだけでは、自ら行った決議について調査し、その判断根拠を説明し、再検証及び是正の要否を判断しない理由にはならない。
当時、関係する事実及び法規範を検討した上で決議したのであれば、その判断過程及び根拠を説明することができるはずである。
反対に、そのような検討を行わずに、刑事責任未確定段階の刑事事件を前提とする公的意思決定を行ったのであれば、その判断過程自体の適正性が問題となる。
公的機関が自らの行為を法令に適合させるためには、関係する法規範を確認し、自らの行為に適用し、その法適合性を判断することが不可避である。
したがって、議会が一般的な法律相談機関ではないことと、議会自身が行った決議の法適合性について調査及び判断を行わないこととは、同一ではない。
本回答は、「質問及び申入れへの回答を拒否する」と明示したものではない。
また、「人権侵害は存在しない」「質問状兼申入書に示された法的主張には理由がない」「決議の撤回又は公式記録の訂正は必要ない」との実体的判断を示したものでもない。
したがって、本回答を検証する際には、須賀川市議会が救済要求を法的に否定したと直ちに解釈するのではなく、回答書自体には、議会自身の決議による人権侵害の有無及び救済の要否に関する実体的判断並びにその理由が示されていないという事実を正確に確認する必要がある。
弁護士に法的助言を求め、又は係争事件への対応を委任すること自体は、議会が法的問題を検討する方法として否定されるものではない。
係争中の事件について不用意な回答を避け、弁護士の助言を得ながら対応することにも、一定の合理性があり得る。
しかし、本件質問状兼申入書で求められていたのは、係争事件における訴訟上の主張又は反論だけではない。
同文書では、無罪推定侵害とされる具体的事実及び根拠規範が示され、須賀川市議会に対し、自ら行った決議及びその公表を維持する法的根拠、実効的救済義務を履行したと判断しているのか、並びに決議の撤回、公式記録の訂正及び名誉回復等の是正措置を講じる意思があるのかが問われていた。
自由権規約第2条第3項は、申立人が求めた救済措置を常にそのまま認容することを求める規定ではない。
しかし、同項は、規約上の権利又は自由を侵害された者に効果的な救済措置を確保するとともに、救済を求める者の権利が、権限ある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国内法制上の他の権限ある機関によって決定されることを確保するよう求めている。
地方議会が同項にいう「権限ある立法上その他の機関」として、あらゆる人権救済を実施する権限を有するわけではない。
しかし、須賀川市議会は、本件辞職勧告決議を自ら可決した機関であり、議会としての公式記録及び公的評価の取扱い並びに議会の権限内で可能な是正措置について判断する立場にある。
したがって、本件で問われるのは、須賀川市議会が申立人の求めた救済を認容したか否かだけではない。
具体的な侵害事実、根拠規範及び求める救済措置を示した申立てについて、決議を行った議会自身又は他の権限ある公的機関による調査並びに権利及び救済の要否に関する実体的な決定が確保されたのかという点である。
弁護士は、議会に法的助言を行い、又は係争事件への対応を補助することができる。
しかし、弁護士への相談又は委任と、須賀川市議会が議事機関として、自ら行った決議の法適合性及び是正の要否について公式の判断を行うこととは同一ではない。
地方自治法第89条第2項は、普通地方公共団体の議会が、当該地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、法律に定める検査及び調査その他の権限を行使することを定めている。
同条第3項は、議会の権限の適切な行使に資するため、議員が住民の負託を受け、誠実にその職務を行うことを求めている。
これらの規定は、議会に一般的な法律相談への回答義務を直接課すものではない。
本件における同条の意義は、議会が単に外部の法律家の回答を伝達するだけの機関ではなく、重要事項を議決し、必要な検査及び調査を行い、自らの権限を行使する主体であることを示す点にある。
さらに、地方自治法第96条第1項第12号は、普通地方公共団体が当事者となる一定の不服申立て、訴えの提起、和解、あっせん、調停及び仲裁に関する事項を、議会の議決事件としている。
この規定は、地方議会が裁判所と同様の終局的な司法判断を行うことを意味するものではない。
しかし、議会が法的紛争又は権利義務関係に関する事項について、およそ判断しない機関ではなく、一定の場合には法的評価を前提とした意思決定を行う制度的立場にあることを示している。
また、地方自治法第100条の2は、議会が、議案の審査又は地方公共団体の事務に関する調査のために必要な専門的事項について、学識経験を有する者等に調査させることができると定めている。
同条は、あらゆる案件において専門的調査を実施する義務を直接定めるものではない。
しかし、専門的又は法的知見を要するという事情によって、議会自身による検討が制度上不可能となるものではなく、必要に応じて専門的知見を利用した調査を行い得ることを示している。
したがって、「議会は法的解釈を示す機関ではない」「弁護士に一任した」という事実だけでは、須賀川市議会が自ら行った決議について、どのような事実調査、法的評価及び是正判断を行ったのか、又は議会として実体的判断を行わないことを決定したのかまでは明らかにならない。
公的機関側の権限配分、訴訟対応上の方針又は弁護士への委任は、調査及び回答の方法に影響を与える事情となり得る。
しかし、これらの内部事情によって、決議を行った議会を含むいずれの権限ある機関も、侵害の有無及び救済の要否を実体的に決定しなくてよいとすれば、自由権規約第2条第3項が定める効果的救済及び権利決定の要件は、実質的な意味を失うことになる。
さらに、日本国憲法第98条第2項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを求めている。
条約法に関するウィーン条約第26条は、効力を有する条約を誠実に履行する原則を定め、同第27条は、国内法を条約不履行の正当化として援用することを認めていない。
これらの規定との関係では、議会は法的解釈を示す機関ではないという国内機関上の位置付け、国内の権限配分、係争中であること又は弁護士への一任という事情によって、自由権規約第2条第3項が求める実効的救済の仕組みそのものが機能しなくなることを正当化できるのかが問われる。
したがって、本資料は、須賀川市議会が国際人権規範及び具体的な救済要求を示された後、どのような実体的判断を行ったのかを記録した文書というより、その時点で須賀川市議会が「法的解釈を示す機関ではない」「係争中」及び「弁護士に一任」という処理方針を回答したことを確認するための文書として位置付けられる。
この資料から生じる疑問
1 刑事事件について辞職勧告決議を判断した議会が、その決議の法適合性について「法的解釈を示す機関ではない」とすることは整合するのか
須賀川市議会は、本人の刑事責任が確定していない段階で、当該刑事事件に関する事実及び評価を前提として、一連の辞職勧告決議を可決した。
特に、第2回辞職勧告決議では、本人が飲酒運転を認めたとの評価を示し、裁判結果を待って進退を判断するとの説明を「社会正義に反する」と評価している。
辞職勧告決議が刑事責任を確定する司法判断ではないとしても、議会が刑事事件について一定の評価を行い、本人が議員を辞職すべきであるとの公的意思を形成したことは否定できない。
その議会が、後に当該決議の憲法適合性及び条約適合性を問われた際、「議会は法的解釈を示す機関ではない」として、実体的な調査及び判断を示さないことは、当時の意思決定との関係で整合するのかが問われる。
仮に、議会が法的評価を行う立場にないというのであれば、刑事責任未確定段階の刑事事件を前提として、本人の進退について公的な辞職勧告決議を行ったこと自体を、どのように正当化するのかが問われる。
2 当時係属していた住民訴訟と、議会に向けられた質問及び救済要求とは、どのように関連すると判断されたのか
本回答には事件名及び事件番号が記載されていないが、その時期及びその後の関係文書から、「現在係争中の事件」は、当時係属していた住民訴訟を指すものとみられる。
しかし、当該住民訴訟は財務会計上の違法を争う手続である一方、4月10日付質問状兼申入書では、須賀川市議会自身が行った辞職勧告決議、公式記録の維持及び実効的救済の要否が問われていた。
須賀川市議会は、議会に関係する各質問及び申入れが住民訴訟とどのように関連し、なぜその全体を弁護士への一任によって処理したのかを説明していない。
3 「弁護士に一任」した対象及び範囲は何か
弁護士に一任した対象が、住民訴訟への対応に限られるのか、質問状兼申入書に対する回答作成を含むのか、又は辞職勧告決議に関する事実調査、法的評価及び是正措置の要否に関する判断まで含むのかは、本回答から確認できない。
弁護士への委任の対象及び範囲は、どのように定められていたのかが問われる。
4 須賀川市議会自身は、人権侵害の有無及び救済の必要性について、どのような調査及び決定を行ったのか
本回答は須賀川市議会議長名で発出されている。
しかし、須賀川市議会が質問状兼申入書に示された侵害事実及び法的根拠について、どのような調査、審議及び判断を行ったのかは記載されていない。
弁護士から助言を受けた上で、議会として一定の実体的判断を行ったのか。
それとも、法的解釈を示す機関ではないこと及び弁護士への一任を理由として、議会自身では実体的判断を行わないこととしたのかが問われる。
5 須賀川市議会に関係する質問事項について、本回答によって処理を完了したと考えていたのか
4月10日付質問状兼申入書全体には、5項目の質問事項が記載されていた。
そのうち第2及び第4の質問事項は須賀川市に向けられたものであるが、辞職勧告決議及びその公表の維持を支える具体的な法的根拠、従前の対応と実効的救済義務との関係、並びに救済を提供しないこと自体による別個の問題については、須賀川市議会にも回答が求められていた。
本回答は、これらの議会に関係する質問について、個別の回答又は具体的な法的根拠を示していない。
須賀川市議会は、各質問への回答を別途行う予定であったのか、それとも、本回答によって回答を完了したと考えていたのかが問われる。
6 3項目の申入事項は、どのように処理されたのか
4月10日付質問状兼申入書では、書面による回答のほか、人権侵害及び是正の必要性を認める場合には、辞職勧告決議の撤回、公式記録の削除又は訂正並びに公開の場における名誉回復措置を講じるよう求めていた。
これらは、決議を行った須賀川市議会の権限及び公的責任と直接関係する事項である。
本回答には、各申入事項を受け入れるのか、拒否するのか、継続して検討するのか、又は他の権限ある機関による判断に委ねるのかが記載されていない。
7 「法的解釈を示す機関ではない」「弁護士に一任した」とする対応は、地方自治法が定める議会の議決・調査権限及び責任とどのように接続するのか
地方自治法第89条第2項は、議会が重要な意思決定に関する事件を議決し、検査及び調査その他の権限を行使することを定めている。
同条第3項は、議会の権限の適切な行使に資するため、議員が住民の負託を受け、誠実にその職務を行うことを求めている。
地方自治法第96条第1項第12号は、普通地方公共団体が当事者となる一定の法的紛争に関する事項を、議会の議決事件としている。
この規定は、議会が裁判所と同様の終局的な司法判断を行うことを意味しないが、議会が法的紛争又は権利義務関係に関する事項について、およそ判断しない機関ではないことを示している。
また、地方自治法第100条の2は、議会が必要と認める専門的事項について、学識経験を有する者等に調査させることができると定めている。
したがって、専門的な法的検討が必要であることは、議会自身による調査及び判断が制度上不可能であることを意味しない。
弁護士に相談し、又は係争事件への対応を委任すること自体は、これらの規定に反するものではない。
しかし、弁護士への委任によって、議会自身が調査、審議及び意思決定を行う主体としての地位まで移転するものではない。
須賀川市議会は、弁護士の助言又は対応を踏まえ、自ら行った決議及び議会の権限内で可能な是正措置について、どのような事実認定、法的評価及び公的決定を行ったのかが問われる。
8 公的機関側の内部事情によって救済判断が行われない場合、自由権規約第2条第3項の要件はどのように確保されるのか
自由権規約第2条第3項は、規約上の権利又は自由を侵害された者に効果的な救済措置を確保するとともに、救済を求める者の権利が、権限ある司法上、行政上、立法上その他の機関によって決定されることを確保するよう求めている。
同項は、申立人が求めた救済を常に認容することまで求めるものではない。
しかし、少なくとも、具体的な権利侵害の主張について調査が行われ、権限ある機関によって侵害の有無及び救済の要否が決定されることを前提としている。
本回答からは、須賀川市議会が人権侵害の有無及び救済の必要性について実体的な決定を行ったのか、又は他の権限ある機関による決定を確保したのかを確認することができない。
議会は法的解釈を示す機関ではないとの認識、係争中であること、弁護士への一任、国内における機関相互の権限配分その他の公的機関側の内部事情によって、いずれの権限ある機関も救済要求を実体的に判断しなくてよいとすれば、自由権規約第2条第3項が定める効果的救済及び権利決定の要件は、実質的に空文化することになる。
また、国内の制度、権限配分又は事務処理上の方針によって条約上の救済義務が実現されないことが許されるのであれば、条約の誠実履行を求める日本国憲法第98条第2項及び条約法に関するウィーン条約第26条との関係をどのように説明するのかが問われる。
さらに、国内法でさえ条約不履行の正当化として援用できないとする同条約第27条との関係で、議会内部の認識又は訴訟対応上の処理方針によって、自由権規約第2条第3項に基づく救済判断が行われないことを正当化できるのかが問われる。
関連法規・条約・国際法上の基準
国内法
日本国憲法第98条第1項
日本国憲法が国の最高法規であり、これに反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為は、その効力を有しないことを定める。
本件では、地方議会による決議、公式記録の維持及びその後の対応についても、憲法及び憲法が保障する人権に適合することが求められるのかが問題となる。
日本国憲法第98条第2項
日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを定める。
本件では、自由権規約第2条第3項及び第14条第2項に基づく義務が、国及び地方の公的機関による具体的な調査、判断及び救済措置を通じて、どのように誠実に履行されたのかが問題となる。
地方自治法第89条第2項
普通地方公共団体の議会が、当該地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、法律に定める検査及び調査その他の権限を行使することを定める。
同項は、議会に一般的な法律相談への回答義務を直接課すものではない。
本件では、須賀川市議会が、自ら可決した辞職勧告決議、その公式記録及び議会の権限内で可能な是正措置について、どのような調査、審議及び意思決定を行ったのかが問題となる。
地方自治法第89条第3項
議会の権限の適切な行使に資するため、議員が住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならないことを定める。
本件では、具体的な人権侵害及び救済の申立てを受けた後、住民の負託を受けた議会及び議員が、自ら行った決議の法適合性と是正の必要性について、どのような調査及び判断を行ったのかが問題となる。
地方自治法第96条第1項第12号
普通地方公共団体が当事者となる一定の不服申立て、訴えの提起、和解、あっせん、調停及び仲裁に関する事項を、議会の議決事件とする規定である。
同項は、地方議会が裁判所と同様の終局的な司法判断を行うことを意味するものではない。
しかし、議会が法的紛争又は権利義務関係に関する事項について、およそ判断しない機関ではなく、一定の場合には法的評価を前提とした意思決定を行う制度的立場にあることを示している。
本件では、須賀川市議会が法的解釈を終局的に確定する機関ではないとしても、自ら行った決議の憲法適合性及び条約適合性について、調査及び判断を行わない理由となるのかが問題となる。
地方自治法第100条の2
議会が、議案の審査又は地方公共団体の事務に関する調査のために必要な専門的事項について、学識経験を有する者等に調査させることができると定める。
同条は、あらゆる案件において専門的調査を実施する義務を直接定めるものではない。
しかし、憲法及び国際人権法に関する専門的検討が必要である場合に、議会が専門的知見を利用した調査を行い得る制度的手段を有していることを示している。
本件では、「法的解釈を示す機関ではない」との説明だけで、自ら行った決議の法適合性について調査及び再検証を行わないことが許されるのかが問題となる。
国際人権条約 自由権規約(ICCPR)
自由権規約第2条第3項
自由権規約上の権利又は自由を侵害された者に効果的な救済措置を確保すること、救済を求める者の権利が権限ある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国内法制上の他の権限ある機関によって決定されること、及び認められた救済措置が権限ある機関によって執行されることを求める。
本件では、具体的な人権侵害及び救済の申立てを受けた後、決議を行った議会を含む権限ある機関による調査、権利の決定及び必要な救済の執行が確保されたのかが問題となる。
自由権規約第14条第2項
刑事上の罪に問われている者が、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を保障する。
本件では、判決確定前に須賀川市議会が行った一連の辞職勧告決議及びその公的評価について提起された無罪推定侵害の主張に対し、議会がどのような調査及び法的評価を行ったのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見31号4項
行政、立法及び司法を含むすべての国家機関並びに国、地域又は地方の各段階にある公的機関が、自由権規約上の義務の履行に関係することを示している。
また、国内における機関相互の権限配分又は憲法その他の国内法を理由として、自由権規約上の義務を履行しないことを正当化できないことを示している。
本件では、須賀川市議会が地方議会であること、又は法的解釈を示す機関ではないとの認識を理由として、自由権規約上の調査及び救済の問題から当然に離脱できるのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見31号15項
自由権規約上の権利侵害の主張について、迅速、徹底的及び実効的な調査を行う必要性を示している。
また、権利侵害の主張について調査を行わないこと自体が、自由権規約の別個の違反を生じさせ得ることを示している。
本件では、須賀川市議会が、具体的な侵害事実及び法的根拠を示した質問状兼申入書を受領した後、どのような調査を行ったのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見31号16項
自由権規約第2条第3項に基づく救済義務を履行するためには、権利を侵害された者に対する適切な回復措置が必要であることを示している。
救済措置には、事情に応じて、原状回復、リハビリテーション、公的謝罪その他の満足措置、再発防止の保証及び関連する法令又は実務の変更等が含まれ得る。
本件では、辞職勧告決議の撤回、公式記録の訂正、名誉回復、公的謝罪及び再発防止措置等について、須賀川市議会が自らの権限の範囲でどのように検討したのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号30項
無罪推定が人権保護の基本原則であり、すべての公的機関が裁判の結果を予断することを差し控えなければならないことを示している。
本件では、判決確定前の公的有罪視を問題とする救済申立てに対し、決議を行った須賀川市議会がどのような実体的判断を行ったのかが問題となる。
条約の履行及び解釈に関する基準
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第26条
効力を有する条約は当事国を拘束し、当事国によって誠実に履行されなければならないことを定める。
本件では、自由権規約第2条第3項及び第14条第2項に基づく義務が、地方議会を含む国内の公的機関による具体的な対応を通じて誠実に履行されたのかが問題となる。
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条
当事国は、条約を履行しないことの正当化として国内法を援用することができないと定める。
本件では、地方自治制度、国内における市と市議会との権限配分、議会は法的解釈を示す機関ではないとの認識、係争中であること又は弁護士への一任という事情によって、権限ある機関による調査及び救済判断が行われないことを正当化できるのかが問題となる。
国家責任条文第4条
国家機関の行為は、その機関が立法、行政、司法その他いかなる機能を行使するものであっても、国際法上、国家の行為とみなされることを示している。
また、中央政府の機関であるか、領域的単位その他の地方の機関であるかを問わず、その行為が国家に帰属することを示している。
本件では、須賀川市議会による決議、事務処理及び回答が、自由権規約上の日本国の義務及び国際法上の国家責任とどのように関係するのかが問題となる。
※各規定の詳しい解釈、本件への適用及び相互関係については、法的主張と違憲違法構造の整理で検討する。
本件との関係
本人は、2025年(令和7年)4月3日、須賀川市議会に対し、一連の辞職勧告決議について独立した検証を行い、必要な是正措置を講じるよう求める陳情書を提出した。
その後、須賀川市議会では、陳情書及び是正要求への対応について、会派代表者会議及び議会運営委員会等における協議が行われた。
また、須賀川市及び須賀川市議会の関係者は、2025年(令和7年)4月19日、是正要求への対応について法律相談を実施した。
この法律相談では、
逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない
との趣旨の解釈が示された。
その後、本人は、2026年(令和8年)4月10日、須賀川市長及び須賀川市議会議長に対し、質問状兼申入書を提出した。
同質問状兼申入書では、自由権規約第14条第2項及び第2条第3項、一般的意見31号及び32号、条約法に関するウィーン条約、国家責任条文並びに日本国憲法第98条第1項及び第2項が具体的に示された。
また、5項目の質問事項及び3項目の申入事項により、一連の辞職勧告決議及びその公表を維持する法的根拠、従前の対応が自由権規約第2条第3項に基づく実効的救済義務を履行したものといえるか、救済を提供しないこと自体が別個の問題となるとの指摘に対する見解、並びに決議の撤回、公式記録の訂正及び名誉回復等を行う意思があるのかが問われた。
なお、同文書の第2及び第4の質問事項は須賀川市に直接向けられたものであり、須賀川市議会に対する質問事項とは区別される。
これに対して発出されたのが、本資料である。
本資料は、須賀川市議会が法的解釈を示す機関ではないと認識していること及び質問状兼申入書の内容が現在係争中の事件に関連することを理由として、弁護士に一任していると回答した。
しかし、本資料には、須賀川市議会に関係する質問事項への個別の回答、3項目の申入事項の処理結果、弁護士に一任した範囲、議会自身による事実調査及び法的判断、並びに他の権限ある機関による救済判断をどのように確保したのかは記載されていない。
この回答を受け、本人は、2026年(令和8年)5月8日、須賀川市議会議長に対し、地方自治法第89条第2項及び第3項、第96条第1項第12号並びに第100条の2等を明示した申入書を提出した。
同申入書では、質問状兼申入書が一般的又は抽象的な法律相談を求めたものではなく、須賀川市議会が自ら行った決議について、その法適合性を調査し、是正の要否を判断するよう求めたものであることが改めて示された。
また、須賀川市議会が刑事責任未確定段階の刑事事件に関する評価を前提として辞職勧告決議を可決した以上、その議決の憲法適合性及び条約適合性について説明し、再検証する必要があることが指摘された。
さらに、地方自治法第96条第1項第12号が、一定の法的紛争及び権利義務関係に関する事項を議会の議決事件としていること、並びに同法第100条の2が、必要に応じて専門的事項を学識経験者等に調査させる制度を設けていることが示された。
その上で、議会が裁判所又は一般的な法律相談機関ではないことと、議会自身が行った辞職勧告決議の憲法適合性及び条約適合性について調査、再検証及び是正措置の検討を行わないこととは別であると指摘された。
同日には、須賀川市議会に対し、一連の辞職勧告決議の調査、審議、是正及び再発防止等を求める陳情書も別途提出された。
この申入書と陳情書は、それぞれ性質及び手続を異にする文書であり、混同してはならない。
これに対し、須賀川市議会は、2026年(令和8年)5月20日、5月8日付申入書について、4月23日付回答のとおりであると回答した。
この5月20日付回答は、5月8日付申入書に対する回答であり、同日付陳情書が議会内部でどのように取り扱われたのかを、それ自体によって示すものではない。
したがって、本資料は、2025年の是正要求及び法律相談を経て、2026年5月の地方自治法第89条、第96条第1項第12号及び第100条の2等を明示した再申入れ並びにその後の回答へ進む中間段階に位置する。
また、本資料は、須賀川市議会が、無罪推定侵害の具体的事実、自由権規約第2条第3項に基づく実効的救済要求、日本国憲法第98条第2項及びVCLTに基づく条約の誠実履行義務を示された後、権利侵害の有無及び救済の要否に関する実体的判断を示すのではなく、「法的解釈を示す機関ではない」「係争中」及び「弁護士に一任」と回答したことを確認するための重要な資料である。
本件で最終的に問われるのは、須賀川市議会が救済要求を認容したか否かだけではない。
具体的な権利侵害の事実及び根拠規範を示して実効的救済が求められたにもかかわらず、決議を行った議会が、自らは法的解釈を示す機関ではないとの認識、訴訟対応又は弁護士への委任を理由として、侵害の有無及び救済の要否を実体的に決定しないことが許されるのかという問題である。
須賀川市議会は、刑事責任未確定段階において刑事事件に関する評価を行い、本人が議員を辞職すべきであるとの公的意思を形成した。
その議会が、後に当該決議の憲法適合性及び条約適合性を問われた際に、法的解釈を示す機関ではないとして実体的判断を行わないのであれば、当初の決議時に行った評価と、その後の説明及び再検証に対する姿勢との整合性が問われる。
そのような処理が許されるのであれば、自由権規約第2条第3項が定める効果的救済、権限ある機関による権利の決定及び救済の執行という要件は、地方議会による権利侵害との関係で実質的に機能しないことになる。
さらに、その状態を国内制度又は公的機関側の内部事情によって正当化することが、日本国憲法第98条第2項、VCLT第26条及び同第27条が求める条約の誠実履行と両立するのかが、本資料を起点として問われている。
関連資料
関連する固定ページ:
関連する証拠記事:
2011年(平成23年)
須賀川市議会議会運営委員会会議録―起訴前勾留中の第1回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―初公判前の第2回辞職勧告決議に向けた内部協議
2012年(平成24年)
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後の第3回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後・辞職前の第4回辞職勧告決議に向けた内部協議
2025年(令和7年)
須賀川市議会提出文書―辞職勧告決議の検証と是正を求めた陳情書
須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正を求める陳情書に関する会派代表者会議協議会結果報告
須賀川市内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談
須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談
2026年(令和8年)
須賀川市・須賀川市議会宛文書―辞職勧告決議による人権侵害の調査、是正及び救済に関する質問状兼申入書
須賀川市発出文書―係争中の事件に関連するため弁護士に一任するとした回答
須賀川市議会発出文書―「法的解釈を示す機関ではない」として弁護士に一任した回答
須賀川市宛文書―人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書
須賀川市議会宛文書―人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書
須賀川市議会宛文書―一連の辞職勧告決議による違法な人権侵害の調査、再検証、是正及び再発防止措置を求める陳情書
須賀川市発出文書―人権侵害救済申立ては法務局を受付窓口とし、法的根拠の照会等には従前回答を維持した回答
須賀川市議会発出文書―人権侵害救済申立て等に対し「4月23日付回答のとおり」とした回答
関連する規範記事:
規範篇―自由権規約(ICCPR)第14条第2項:無罪推定の原則
規範篇―一般的意見32号30項:公的機関による判決前の裁判結果の予断禁止
規範篇―自由権規約(ICCPR)第2条第3項:実効的救済を受ける権利
規範篇―一般的意見31号15項:調査義務と救済不実施それ自体の問題
規範篇―条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条:国内制度を理由に条約義務を免れられるのか
関連する時系列:
2025年(令和7年)
2025年(令和7年)4月3日
圓谷年雄が、須賀川市に対し、辞職勧告決議により生じた人権侵害の検証及び是正を求める申入書を提出した。あわせて、須賀川市議会に対し、辞職勧告決議について独立した検証及び是正を求める陳情書を提出した。
2025年(令和7年)4月8日
須賀川市議会において、本件陳情の取扱いに関する会派代表者会協議会が開催された。
2025年(令和7年)4月19日
須賀川市側及び須賀川市議会側において、本件申入れ及び陳情への対応に関する法律相談が、それぞれ行われた。
須賀川市側の法律相談では、「逮捕されているため、有罪に近い推定がなされても問題ない」との趣旨の解釈が示された。
2025年(令和7年)4月28日
須賀川市が、本件申入れについて「適正に処理した」とする趣旨の最終回答を行った。
2026年(令和8年)
2026年(令和8年)4月10日
圓谷年雄が、須賀川市長及び須賀川市議会議長に対し、辞職勧告決議の是正及び実効的救済を求める質問状兼申入書を提出した。
同文書では、辞職勧告決議と無罪推定との関係、市及び市議会による調査及び是正の必要性並びに自由権規約第2条第3項に基づく実効的救済について、書面による回答を求めた。
2026年(令和8年)4月23日
須賀川市が、質問状兼申入書について、現在係争中の事件に関連する内容であるため、弁護士に一任していると回答した。
同日、須賀川市議会は、議会は法的解釈を示す機関ではなく、現在係争中の事件に関連する内容であるため、弁護士に一任していると回答した。
2026年(令和8年)5月8日
圓谷年雄が、須賀川市長に対し、「人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書」を提出した。
同日、須賀川市議会議長に対しても、議会の権限及び責任に即した別個の「人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書」を提出した。
さらに同日、須賀川市議会に対し、一連の辞職勧告決議による人権侵害について、議会の正式な手続による調査、再検証、是正及び再発防止措置を求める陳情書を、申入書とは別個に提出した。
2026年(令和8年)5月20日
須賀川市が、人権侵害救済申立てについては法務局が受付窓口になると案内し、法的根拠の照会及び是正措置申入れについては、4月23日付回答のとおりであると回答した。
同日、須賀川市議会は、5月8日付の人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書について、4月23日付回答のとおりであると回答した。
須賀川市議会の同日付回答には、5月8日に別個に提出された陳情書への言及はなく、同回答だけからは、陳情書が議会内部でどのように取り扱われたのかを確認することはできない。
