2026年7月19日 更新
資料の概要
資料名:
平成23年12月定例会 平成23年12月1日議事録
作成日:
2011年(平成23年)12月1日
作成主体:
須賀川市議会
取得経路:
須賀川市議会ホームページより取得
資料の種類:
市議会本会議議事録
対象となる時期:
2011年(平成23年)12月1日
掲載形式:
原文から関連部分を抜粋したPDF
原文PDF:
Skip to PDF contentこの資料で確認できる事実
本資料は、2011年(平成23年)12月1日に開かれた、須賀川市議会平成23年12月定例会の本会議議事録である。
本会議では、圓谷年雄議員に対する2回目の議員辞職勧告決議案が扱われている。
この決議案は、2011年(平成23年)10月26日に可決された第1回辞職勧告決議に続くものである。
第2回辞職勧告決議に先立ち、2011年(平成23年)11月24日、須賀川市議会において議員全員協議会が開かれた。
この時点で、圓谷年雄は起訴後であったが、第1回公判はまだ開かれていなかった。
圓谷年雄は、議員活動を通じて信頼回復に努めること、後援会から議員を継続するよう要請されていること及び刑事裁判の結果を待って進退を判断することを理由として、議員を続けるとの意思を示した。
その4日後の2011年(平成23年)11月28日、須賀川市議会議会運営委員会が開かれた。
議会運営委員会では、11月24日の議員全員協議会における圓谷年雄の言動について、第1回辞職勧告決議に応じる姿勢を感じることができなかったとの評価が示された。
また、圓谷年雄が自ら飲酒運転を認める発言をしており、このまま議員を続けることは断じて許されないことを本人に理解させるためにも、再度決議すべきであるとの趣旨が示された。
その上で、12月1日の本会議において、圓谷年雄を地方自治法第117条により除斥し、提出者による提案理由の説明を行い、質疑、委員会付託及び討論を省略して採決する手順が整理された。
さらに、決議が可決された場合には、本会議を休憩し、議長室において圓谷年雄に決議が可決された旨を告知した後、本会議を再開することも整理された。
2011年(平成23年)12月1日の本会議において、圓谷年雄は議場に出席していた。
議長は、地方自治法第117条を理由として、圓谷年雄に退場を求めた。
圓谷年雄が退場した後、議員提出決議案第2号として、圓谷年雄議員に対する議員辞職勧告決議案が議題とされた。
提出者から提案理由の説明が行われた。
提案理由では、2011年(平成23年)10月26日に第1回辞職勧告決議が可決されたこと、その後、同年11月24日に議員全員協議会が開催され、圓谷年雄本人から説明があったことが前提とされている。
圓谷年雄が、第1回辞職勧告決議を重く受け止めると述べながら、議員を辞職する意思を示さなかったことが問題とされた。
また、圓谷年雄が、議員活動を通じて信頼回復に努めること、後援会から議員を継続するよう要請されていること及び裁判結果を待って進退を判断することを理由として、議員を続けるとしていることが説明された。
その上で、これらの対応について、「社会正義に反する」との評価が示された。
さらに、提案理由では、「在職中に飲酒運転をしたことは言語道断であり、そうした人間がそのまま市議会議員を続けるべきではありません」との発言が行われた。
提案理由説明後、質疑、委員会付託及び討論は省略された。
採決は起立により行われ、出席議員全員が起立した。
議長は、全員起立であるとして、議員提出決議案第2号が原案のとおり可決されたと宣告した。
本会議はその後休憩に入り、圓谷年雄は議長室において、決議が可決された旨を告知された。
したがって、第2回辞職勧告決議は、圓谷年雄が刑事裁判の結果を待って進退を判断するとの意思を示した7日後、議会運営委員会で再決議の理由及び処理手順が整理された3日後に、本人を退場させ、質疑、委員会付託及び討論を省略した上で可決された。
この時点では、第1回公判はまだ開かれておらず、裁判所による事実認定及び有罪判断は存在していなかった。
重要な記載
本資料で特に重要なのは、第2回辞職勧告決議が、第1回公判前かつ有罪判決前に行われたことである。
圓谷年雄は、2011年(平成23年)11月24日の議員全員協議会において、刑事裁判の結果を待って進退を判断するとの意思を示していた。
しかし、その4日後の11月28日に開かれた議会運営委員会では、この説明が、第1回辞職勧告決議に応じる姿勢を示さないものとして評価された。
さらに、圓谷年雄が飲酒運転を認めたとの評価を前提として、再度の辞職勧告決議を行う理由及び本会議における処理手順が整理された。
その手順は、圓谷年雄を地方自治法第117条により除斥し、提出者による提案理由の説明後、質疑、委員会付託及び討論を省略して採決し、可決後に議長室で本人へ告知するというものであった。
その3日後の12月1日の本会議では、この手順に従って、圓谷年雄が退場した後に提案理由の説明、質疑、委員会付託及び討論の省略並びに採決が行われた。
提案理由では、圓谷年雄が裁判結果を待って進退を判断するとしていたことを含む対応について、「社会正義に反する」との評価が示された。
さらに、初公判前であるにもかかわらず、「在職中に飲酒運転をしたことは言語道断であり、そうした人間がそのまま市議会議員を続けるべきではありません」と述べられた。
この発言は、単に逮捕又は起訴という手続上の事実を示したものではない。
圓谷年雄が飲酒運転を行ったことを、既に確定した事実として扱う内容である。
第2回辞職勧告決議は、出席議員全員の起立によって可決された。
したがって、第2回辞職勧告決議は、圓谷年雄が刑事裁判の判断を待つとの意思を明確に示した後、その対応を否定的に評価し、初公判前の段階で犯罪行為を行ったことを前提とする公式な意思表示を、あらかじめ整理された手順に従って行ったものである。
また、地方自治法第117条による除斥は、本人が審議及び採決に加わらないことを定めるものである。
本人を除斥することと、本人に提案理由の内容を事前に示し、弁明又は反論の機会を与えることは、別の問題である。
本資料上、本人が退場する前に、提案理由に対する弁明又は反論の機会が与えられたことを示す記載は確認できない。
刑事手続上の位置付け
圓谷年雄は、2011年(平成23年)11月9日に道路交通法違反の罪で起訴され、同日、保釈された。
同年11月14日付召喚状により、第1回公判期日は同年12月26日に指定された。
2011年(平成23年)11月24日の議員全員協議会及び同年12月1日の第2回辞職勧告決議の時点では、第1回公判はまだ開かれていなかった。
刑事裁判における証拠調べも行われておらず、裁判所による事実認定及び有罪判断も存在していなかった。
圓谷年雄は、11月24日の議員全員協議会において、刑事裁判の結果を待って進退を判断するとの意思を示した。
しかし、その説明は、第1回辞職勧告決議に応じる姿勢を示さないものとして評価され、7日後の第2回辞職勧告決議へ接続された。
第2回辞職勧告決議の提案理由では、初公判前であるにもかかわらず、圓谷年雄が在職中に飲酒運転をしたことを前提とする断定的評価が示された。
したがって、第2回辞職勧告決議は、刑事裁判の開始前に、公的機関である須賀川市議会が、犯罪行為があったことを前提として本人の責任を評価し、辞職を求めた公的意思表示である。
本決議が、刑事裁判の証拠評価又は判決に具体的な影響を及ぼしたと、現在確認できる資料だけから断定することはできない。
しかし、第2回辞職勧告決議及びその提案理由自体が、自由権規約第14条第2項及び一般的意見32号30項が保障する無罪推定に適合していたかは、刑事裁判への具体的影響の立証とは独立して検証されなければならない。
さらに、本件判決書の「証拠の標目」には、司法警察員に対する第三者3名の各供述調書及び検察官に対する第三者2名の各供述調書が掲げられている。
第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側による反対尋問は行われていない。
このうち、検察官に対する供述調書を作成された2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。
この事実だけから、各供述が虚偽であったこと、各供述調書に証拠能力がなかったこと又は第2回辞職勧告決議が刑事裁判へ直接影響したことを断定することはできない。
しかし、判決前に本人の辞職を求める決議に賛成した市議会議員の供述調書が、同じ刑事事件の検察側証拠となり、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問を経ていないことは、公正な裁判、適正手続及び証人審問権との関係で検証を必要とする。
この資料から生じる疑問
1 辞職勧告決議に法的拘束力がないことは、無罪推定上の問題を否定する理由になるのか
辞職勧告決議は、一般に、対象議員の資格を直ちに失わせる法的効果を持つものではないと説明される。
しかし、このことは、無罪推定との関係で問題がないことを意味しない。
自由権規約委員会一般的意見32号30項は、すべての公的機関が裁判結果を予断することを控えなければならないことを示している。
同項が参照するGridin v. Russian Federation(グリディン対ロシア事件)では、法的拘束力を持つ処分ではなく、公的機関関係者による有罪を前提とする発言が、自由権規約第14条第2項との関係で問題とされた。
したがって、無罪推定との関係で問われるのは、当該行為に対象者の法的地位を直接変更する強制力があるかどうかだけではない。
問題の核心は、公的機関が、有罪判決が確定する前に、本人が犯罪を行ったことを確定した事実として扱い、裁判結果を予断する発言、表示、決議又は公的取扱いを行ったかどうかにある。
本件では、第1回辞職勧告決議が、2011年(平成23年)10月26日、圓谷年雄が起訴前勾留により本会議へ出席できない状態で行われた。
その決議では、逮捕を前提として政治的・道義的責任を問い、議員辞職を求める公的意思表示が行われた。
さらに、第2回辞職勧告決議は、2011年(平成23年)12月1日、第1回公判前かつ有罪判決前に行われた。
圓谷年雄は、その7日前の議員全員協議会において、刑事裁判の結果を待って進退を判断するとの意思を示していた。
しかし、第2回決議の提案理由では、この対応について「社会正義に反する」と評価され、さらに、「在職中に飲酒運転をしたことは言語道断であり、そうした人間がそのまま市議会議員を続けるべきではありません」と述べられた。
これは、単に圓谷年雄が逮捕又は起訴されたという手続上の事実を示したものではない。
初公判前の段階で、圓谷年雄が飲酒運転を行ったことを確定した事実として扱い、その前提に基づいて辞職を求める内容である。
辞職勧告決議に法的拘束力がないことだけで、このような判決前の公的有罪視が自由権規約第14条第2項の適用対象から除外されるのであれば、公的機関は、本人の法的地位を直接変更しない発言又は決議という形式を用いることによって、無罪推定の規律を回避できることになる。
それでは、公的機関による判決前の予断を禁止する一般的意見32号30項の保障は空洞化する。
したがって、辞職勧告決議に法的拘束力がないという説明は、本件決議が無罪推定に適合していたことの根拠にはならない。
須賀川市議会は、初公判前かつ有罪判決前に、犯罪行為を行ったことを確定した事実として扱う公式な決議を行ったことが、なぜ自由権規約第14条第2項及び一般的意見32号30項に反しないのかを、具体的に説明できるのか。
2 判決前の議会決議は、司法権の所在及び裁判の公平性との関係でどのような問題を生じさせるのか
日本国憲法第76条第1項は、すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属すると定めている。
また、同条第3項は、すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束されると定めている。
本件では、第2回辞職勧告決議が、起訴後ではあるものの、初公判前、判決前の段階で行われている。
この時点では、刑事裁判における証拠調べも始まっておらず、裁判所による有罪判断も存在していなかった。
それにもかかわらず、地方議会という公的機関が、議員全員協議会での本人説明を踏まえた上で、再度の辞職勧告決議を可決している。
また、本会議での採決は、本人が退場した後に行われている。
このような判決前の公的意思表示は、刑事責任の判断が本来司法権に属すること、及び裁判官が外部の影響を受けずに独立して判断すべきこととの関係で問題となる。
したがって、第2回辞職勧告決議については、無罪推定だけでなく、司法権の所在及び裁判の公平性との関係でも検討する必要がある。
3 裁判結果を待って進退を判断することは、社会正義に反するのか
本資料では、本人が、裁判結果を待って進退を判断するとしていたことが記録されている。
刑事責任は、刑事裁判によって判断される。
有罪判決が確定する前の者は、無罪と推定される。
したがって、本人が、刑事裁判の結果を待った上で進退を判断するとしたことは、無罪推定を前提とするならば、当然に尊重されるべき対応ではないか。
それにもかかわらず、第2回辞職勧告決議では、この姿勢を社会正義に反し、議会の決定を著しく軽視するものと評価している。
裁判所の判断を待つという本人の姿勢を、議会が否定的に評価し、再度の辞職勧告決議の理由としたことは、無罪推定、適正手続及び司法権の所在との関係でどのように説明されるのか。
4 地方自治法第117条による除斥と、本人に弁明又は反論の機会を与えることは別の問題ではないか
本資料では、議長が地方自治法第117条を理由として、圓谷年雄に退場を求めている。
地方自治法第117条により、本人が自己に関する議案の審議及び採決に加わらないことと、本人に事実関係を説明し、提案理由に反論し、弁明する機会を与えることは別の問題である。
本会議では、本人が退場した後に提案理由の説明が行われ、質疑、委員会付託及び討論が省略され、採決が行われた。
したがって、圓谷年雄は、提案理由において示された「社会正義に反する」「在職中に飲酒運転をしたことは言語道断」とする評価に対し、その場で反論又は補足説明を行うことができなかった。
本人を除斥する前に提案理由の内容を示すこと、弁明書を受け付けること、別の機会に反論を聴取すること又は代理人を通じた説明の機会を設けることは検討されたのか。
本人の政治的地位、名誉及び社会的評価に重大な影響を及ぼし得る決議について、本人の弁明又は反論の機会は、いつ、どのような方法で保障されていたのか。
5 議員全員協議会における本人説明を、犯罪行為を認めた根拠として扱うことは適切だったのか
提案理由では、2011年(平成23年)11月24日の議員全員協議会において、圓谷年雄が飲酒運転を認めたと説明されている。
しかし、本議事録から直接確認できるのは、決議案の提出者が、圓谷年雄が飲酒運転を認めたと説明したという事実である。
本議事録自体には、11月24日の圓谷年雄の具体的な発言内容が逐語的に記録されているわけではない。
また、11月24日の議員全員協議会では、圓谷年雄は、弁護士が同席しない状態で、本人1人に対し他の議員26人という状況で、刑事事件に関係する事項について説明した。
この時点では、第1回公判はまだ開かれていなかった。
刑事事件について説明を拒むこと、発言を限定すること又は裁判結果が出るまで進退判断を留保することは、本来、不利益に評価されるべきものではない。
このような状況における本人説明を、通常の対等な場における自由な意思表明と同様に扱うことができるのか。
また、その説明を、犯罪行為を認めた根拠として扱い、初公判前に再度の辞職勧告決議を行うことは、自己負罪拒否、無罪推定及び適正手続の保障と整合するのか。
6 初公判前、判決前に、飲酒運転をしたと断定することは許されるのか
提案理由では、在職中に飲酒運転をしたことは言語道断であると述べられている。
しかし、本決議の時点では、初公判はまだ開かれていない。
有罪判決も言い渡されていない。
刑事責任の有無は、裁判所が証拠に基づいて判断すべき事項である。
公的機関である須賀川市議会が、初公判前、判決前に、飲酒運転をしたことを前提とする評価を示すことは、無罪推定の原則と整合するのか。
また、それは裁判所による司法判断を先取りするものではないか。
7 議会の決定を重視することと、裁判結果を待つことは両立しないのか
提案理由では、本人が議員を続けることについて、議会の決定を著しく軽視するものであると評価している。
しかし、第1回辞職勧告決議も、法的拘束力を有する裁判ではない。
本人が議会の意思表示を認識しながら、刑事裁判の結果を待って進退を判断するとしたことは、直ちに議会を軽視することになるのか。
議会の決定を尊重することと、裁判所による判断を待つことは、本来両立し得るものではないか。
8 市民感情を理由として、判決前に辞職を求めることは許されるのか
提案理由では、市民感情からしても許されるものではないと述べられている。
しかし、無罪推定は、市民感情が強い場合であっても尊重されなければならない原則である。
市民感情を理由として、判決前に公的機関が断罪的評価を示し、辞職を求めることは許されるのか。
市民感情を理由にすることによって、自由権規約(ICCPR)第14条第2項及び一般的意見第32号第30項が示す公的機関の予断禁止の問題を回避できるのか。
9 事前に処理手順を整理し、質疑、委員会付託及び討論を省略したことは適切だったのか
第2回辞職勧告決議の3日前に開かれた議会運営委員会では、再決議の理由だけでなく、本人除斥、提案理由説明、質疑、委員会付託及び討論の省略、採決並びに可決後の本人への告知という処理手順が整理されていた。
12月1日の本会議では、この手順に従って、本人が退場した後に提案理由の説明、質疑、委員会付託及び討論の省略並びに採決が行われた。
この時点では、第1回公判はまだ開かれていなかった。
本人が裁判結果を待って進退を判断すると説明した理由、刑事裁判の進行状況、無罪推定、自己負罪拒否、本人の弁明機会及び司法権の所在について、十分な検討が行われたのか。
また、提案理由において犯罪行為を行ったことを断定する内容が示されながら、質疑及び討論を行わず、出席議員全員の起立によって可決した手続は、慎重かつ公正な審議であったといえるのか。
10 出席議員全員が賛成したことは、各議員の憲法尊重擁護義務と整合するのか
第2回辞職勧告決議は、本人の退場後、出席議員全員の起立によって可決された。
地方議会議員は、憲法を尊重し、擁護する義務を負う。
出席議員は、無罪推定、適正手続、自己に不利益な供述を強要されない権利、本人の弁明の機会、裁判の公平性及び司法権の所在との関係を検討したのか。
出席議員全員が賛成したことは、当時の須賀川市議会として、判決前に本人を断罪する方向で公的意思を示したことを意味する。
このような全員賛成の決議が、本人の名誉、社会的評価、政治的地位及びその後の議員活動に与えた影響をどのように評価すべきか。
11 その後、須賀川市議会は本決議を検証したのか
本決議は、その後も撤回されていない。
2025年(令和7年)4月3日には、辞職勧告決議の検証及び是正を求める陳情書が提出された。
須賀川市議会は、第2回辞職勧告決議の内容、手続、影響及び法的評価について、客観的な調査及び検証を行ったのか。
関連法規・条約・国際法上の基準
国内法
日本国憲法第13条: 個人の尊重、人格的利益、名誉及び社会的評価との関係が問題となる。辞職勧告決議が、本人の名誉、社会的評価、政治的地位及び議員活動に与えた影響が問題となる。
日本国憲法第15条第1項: 公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利である。選挙によって選ばれた議員に対し、判決前に議会が辞職を求める決議を行ったことと、住民の選挙による負託との関係が問題となる。
日本国憲法第31条: 適正手続の保障との関係が問題となる。本件では、本人に弁明又は反論の機会が十分に確保されていたかだけでなく、公的機関である市議会が、刑事裁判の判決前に有罪を前提とする評価を示したこと自体が、適正手続及び無罪推定の趣旨と整合するのかが問題となる。
日本国憲法第32条: 裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示し、その評価が報道及び社会的評価を通じて広がった場合に、その後の刑事裁判において、本人が公平な司法判断を受ける地位が十分に保障されていたといえるのかが問題となる。
日本国憲法第37条第1項: 刑事被告人が公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前の公的機関による有罪視が、公判及び判決に外部的圧力を及ぼし得る状況の中で、公平な裁判が保障されていたといえるのかが問題となる。
日本国憲法第37条第2項:刑事被告人に、すべての証人を審問する十分な機会を保障している。本件判決書の「証拠の標目」には第三者5名の供述調書が掲げられているが、供述者本人に対する証人尋問及び圓谷年雄側からの反対尋問は行われていない。そのうち2名が第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した市議会議員であったことを踏まえ、供述内容及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかが問題となる。
日本国憲法第38条第1項: 何人も、自己に不利益な供述を強要されないことを定めている。刑事裁判を控えた本人が、弁護士不在の状態で、本人1人に対し他の議員26人という著しく不均衡な状況において説明を求められ、その内容が後に辞職勧告決議の理由として扱われたことと、自己負罪拒否の趣旨との関係が問題となる。
日本国憲法第76条第1項: すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。刑事責任の有無を終局的に判断する権限を有しない市議会が、初公判前に犯罪行為があったことを前提とする断定的評価を示したことは、裁判所による司法判断を先取りし、司法権の所在との関係で問題となる。
日本国憲法第76条第3項: 裁判官が独立して職権を行使し、憲法及び法律のみに拘束されるべきこととの関係が問題となる。判決前の公的評価が報道及び社会的評価を通じて広がった場合、裁判官の独立及び裁判の公平性との関係でも検証が必要となる。
日本国憲法第93条第2項: 地方公共団体の議会の議員が住民の直接選挙によって選ばれることと、議会による辞職勧告決議との関係が問題となる。
日本国憲法第98条第2項: 日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守する義務との関係が問題となる。日本が批准した自由権規約(ICCPR)を誠実に履行すべき義務との関係が問題となる。
日本国憲法第99条: 市議会議員その他の公務員が負う憲法尊重擁護義務との関係が問題となる。公的機関である市議会が、判決前に有罪を前提とする評価を示したことが、憲法尊重擁護義務と整合するのかが問題となる。
刑事訴訟法第336条: 犯罪の証明がない場合には無罪判決をしなければならないことを定めている。刑事裁判における無罪推定の原則との関係が問題となる。
地方自治法第117条: 普通地方公共団体の議会の議員が、自己又は一定の親族等の一身上に関する事件について議事に参与することができないとする規定との関係が問題となる。本人を退場させることと、本人に弁明又は反論の機会を保障することは別の問題であり、本件ではその手続的意味が問題となる。
地方自治法第135条: 地方議会議員に対する懲罰の法定手続と、辞職勧告決議が実質的に与えた不利益との関係が問題となる。
国際人権条約
自由権規約(ICCPR)第14条第1項: 公平な裁判を受ける権利との関係が問題となる。判決前に公的機関が有罪を前提とする評価を示し、その評価が報道及び社会的評価を通じて広がった場合に、その影響下で行われた刑事手続及び裁判が、公正な裁判を受ける権利を十分に保障したものといえるのかが問題となる。
自由権規約(ICCPR)第14条第2項: 刑事上の罪に問われている者は、法律により有罪と認められるまでは無罪と推定される権利を保障される。本件では、初公判前、判決前に、公的機関である市議会が有罪を前提とする評価を示したこと自体が、無罪推定の原則との関係で問題となる。
自由権規約(ICCPR)第14条第3項(e):刑事被告人に対し、自己に不利な証人を尋問し又は尋問させる権利を保障している。本件では、判決書に掲げられた第三者5名の供述調書について、供述者本人に対する証人尋問及び反対尋問が行われていないこととの関係が問題となる。
自由権規約(ICCPR)第14条第3項(g): 刑事上の罪に問われている者が、自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されない権利との関係が問題となる。刑事裁判を控えた本人が、議員全員協議会における説明を求められ、その内容が後に辞職勧告決議の理由として扱われたこととの関係が問題となる。
自由権規約(ICCPR)第2条第3項: 規約上の権利侵害に対する実効的救済を確保する義務との関係が問題となる。人権侵害の是正を求める申入れを受けた後の対応と、実効的救済を確保する義務との関係が問題となる。
条約の履行及び解釈に関する基準
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第26条: 効力を有する条約は当事国を拘束し、誠実に履行されなければならない。日本が批准した自由権規約(ICCPR)を誠実に履行すべき義務との関係が問題となる。
条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条: 国内法を理由として、条約上の義務を履行しないことを正当化できない。辞職勧告決議が国内法上、法的拘束力のない政治的意思表示であること、地方議会による行為であること、又は議会内部の問題であることを理由として、自由権規約(ICCPR)第14条第2項が保障する無罪推定の問題を回避できるのかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号30項: すべての公的機関には、刑事裁判の結果を予断しない義務があることを示している。本件では、公的機関である須賀川市議会が、初公判前、判決前に、在職中に飲酒運転をしたことを前提とする断定的評価を示したこととの関係が問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号39項:武器対等及び実効的防御の保障として、不利益な証人を尋問し、その供述を争う適切な機会が与えられなければならないことを示している。本件では、辞職勧告決議に賛成した市議会議員2名を含む第三者5名の供述内容及び信用性を、公判廷において実質的に争う機会が保障されていたかが問題となる。
自由権規約委員会一般的意見32号第41項: 自らに不利益な供述又は自白を強要されない権利について、直接又は間接の身体的圧力及び不当な心理的圧力が存在しないことを求める国際基準との関係が問題となる。
自由権規約委員会一般的意見31号: 規約上の権利侵害に対する実効的救済、継続する侵害の停止及び適切な是正措置との関係が問題となる。
※各規定の詳しい解釈、本件への適用及び相互関係については、法的主張と違憲違法構造の整理で検討する。
本件との関係
本資料は、2011年(平成23年)から2012年(平成24年)にかけて行われた4度の辞職勧告決議のうち、第2回辞職勧告決議に関する本会議議事録である。
第1回辞職勧告決議は、圓谷年雄が起訴前勾留により本会議へ出席できない状態で可決された。
これに対し、第2回辞職勧告決議では、圓谷年雄は本会議に出席していたが、地方自治法第117条を理由として退場を求められた。
圓谷年雄が退場した後、提出者による提案理由の説明、質疑、委員会付託及び討論の省略並びに採決が行われた。
第2回辞職勧告決議に先立つ2011年(平成23年)11月24日、議員全員協議会が開かれた。
圓谷年雄は、議員活動を通じて信頼回復に努めること、後援会から議員を継続するよう要請されていること及び刑事裁判の結果を待って進退を判断することを理由として、議員を続けるとの意思を示した。
この時点では、第1回公判はまだ開かれていなかった。
圓谷年雄は、弁護士が同席しない状態で、本人1人に対し他の議員26人という状況において、刑事事件に関係する事項について説明した。
その説明が、自由かつ対等な状況における通常の意思表明と同様に扱えるものであったかは、慎重に検討されなければならない。
その4日後の11月28日、議会運営委員会において、圓谷年雄の説明は、第1回辞職勧告決議に応じる姿勢を示さないものとして評価された。
また、圓谷年雄が飲酒運転を認めたとの評価を前提として、再決議の理由、本人除斥、提案理由説明、質疑、委員会付託及び討論の省略、採決並びに可決後の告知手順が整理された。
その3日後の12月1日、この手順に従って第2回辞職勧告決議が行われた。
提案理由では、圓谷年雄が裁判結果を待って進退を判断するとしていたことを含む対応について、「社会正義に反する」との評価が示された。
さらに、初公判前であるにもかかわらず、「在職中に飲酒運転をしたことは言語道断であり、そうした人間がそのまま市議会議員を続けるべきではありません」と述べられた。
ここで最初に判断されなければならないのは、第2回辞職勧告決議が刑事裁判へ具体的な影響を及ぼしたかという問題ではない。
初公判前かつ有罪判決前に、公的機関である須賀川市議会が、圓谷年雄について犯罪行為を行ったことを前提とする公式な意思表示を行ったこと自体が、自由権規約第14条第2項及び一般的意見32号30項に適合していたかという問題である。
無罪推定は、有罪判決の結果を左右したことが証明された場合にだけ保護される権利ではない。
有罪判決が確定する前に、公的機関から有罪者として扱われないこと自体が、その保障内容である。
その上で、本件刑事手続の証拠構造との関係を別に検証する必要がある。
本件判決書の「証拠の標目」には、司法警察員に対する第三者3名の各供述調書及び検察官に対する第三者2名の各供述調書が掲げられている。
第三者5名に対する証人尋問及び圓谷年雄側からの反対尋問は行われていない。
このうち、検察官に対する供述調書を作成された2名は、第1回及び第2回辞職勧告決議に賛成した須賀川市議会議員であった。
この事実だけから、市議会議員2名の供述が虚偽であったこと、供述調書に証拠能力がなかったこと又は第2回辞職勧告決議が刑事裁判へ直接影響したことを断定することはできない。
また、証人尋問及び反対尋問が行われなかったことだけから、直ちに証人審問権侵害が確定するものでもない。
しかし、刑事責任確定前に本人の辞職を求める公的意思表示に賛成した市議会議員の供述調書が、同じ刑事事件の検察側証拠となり、その供述者本人の記憶、認識、供述経過、決議への関与、立場及び信用性について、公判廷における証人尋問及び反対尋問による吟味が行われなかったことは、実質的な検証を必要とする。
各供述調書の形式上の証拠採用根拠又は弁護側の同意の有無と、不利益な供述の内容及び信用性を実質的に争う機会が保障されていたかは、区別して判断されなければならない。
したがって、本資料は、第2回辞職勧告決議自体の無罪推定との適合性を検証する資料であるとともに、その状況の下で進行した刑事手続の公正性、適正手続及び証人審問権との接続を検証するための重要な資料でもある。
関連資料
関連する固定ページ:
関連する証拠記事:
2011年(平成23年)
須賀川市議会議会運営委員会会議録―起訴前勾留中の第1回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―初公判前の第2回辞職勧告決議に向けた内部協議
2012年(平成24年)
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後の第3回辞職勧告決議に向けた内部協議
須賀川市議会議会運営委員会会議録―判決確定後・辞職前の第4回辞職勧告決議に向けた内部協議
2025年(令和7年)
須賀川市議会提出文書―辞職勧告決議の検証と是正を求めた陳情書
須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正を求める陳情書に関する会派代表者会議協議会結果報告
須賀川市内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談
須賀川市議会内部文書―人権侵害の是正申入れ後に実施された法律相談
2026年(令和8年)
須賀川市・須賀川市議会宛文書―辞職勧告決議による人権侵害の調査、是正及び救済に関する質問状兼申入書
須賀川市発出文書―係争中の事件に関連するため弁護士に一任するとした回答
須賀川市議会発出文書―「法的解釈を示す機関ではない」として弁護士に一任した回答
須賀川市宛文書―人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書
須賀川市議会宛文書―人権侵害救済申立て並びに法的根拠の照会及び是正措置申入書
須賀川市議会宛文書―一連の辞職勧告決議による違法な人権侵害の調査、再検証、是正及び再発防止措置を求める陳情書
須賀川市発出文書―人権侵害救済申立ては法務局を受付窓口とし、法的根拠の照会等には従前回答を維持した回答
須賀川市議会発出文書―人権侵害救済申立て等に対し「4月23日付回答のとおり」とした回答
関連する規範記事:
規範篇―自由権規約(ICCPR)第14条第2項:無罪推定の原則
規範篇―一般的意見32号30項:公的機関による判決前の裁判結果の予断禁止
規範篇―自由権規約(ICCPR)第2条第3項:実効的救済を受ける権利
規範篇―一般的意見31号15項:調査義務と救済不実施それ自体の問題
規範篇―条約法に関するウィーン条約(VCLT)第27条:国内制度を理由に条約義務を免れられるのか
関連する時系列:
2011年(平成23年)10月18日 本件事故が発生したとされた。
2011年(平成23年)10月19日 圓谷年雄が警察署に任意出頭した後、逮捕状に基づいて通常逮捕され勾留開始。現行犯逮捕ではなかった。
2011年(平成23年)10月24日 第1回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2011年(平成23年)10月26日 第1回辞職勧告決議
2011年(平成23年)11月9日 起訴され、その後保釈された。
2011年(平成23年)11月28日 第2回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2011年(平成23年)12月1日 第2回辞職勧告決議
2012年(平成24年)1月16日 有罪判決
2012年(平成24年)1月31日 判決確定
2012年(平成24年)2月7日 第3回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2012年(平成24年)2月9日 第3回辞職勧告決議
2012年(平成24年)2月27日 第4回辞職勧告決議前の議会運営委員会
2012年(平成24年)3月1日 第4回辞職勧告決議
